研究課題
研究活動スタート支援
中高ドイツ語のアーサー王物語の諸作品は13世紀初頭にフランス文化の受容によって生まれるが、その後はモチーフの借用や再編成で独自の発展を遂げる。本研究は『パルチヴァール』と、1970年代まで「古典」の模倣作品と評された『王冠』を主な対象とし、ガーヴァーンの人物造形と美徳概念「誠実(triuwe)」に関する表現を分析した。その結果、『パルチヴァール』を転回点として作品世界の価値が多元化し、自律的な人物像が現れたことがわかった。
ドイツ中世文学
騎士の美徳は中世ドイツの宮廷文学の主題であるが、その概念研究は、過度の一般化や、推測が先行する循環論法が反省された結果、近年は空白傾向が続いた。本研究は「誠実(triuwe)」という語の用例分析を出発点として、「古典」以降の作品において価値が宮廷世界から解放され多元化したことの一端を明らかにした。これは『パルチヴァール』以後に作品構造や人物造形における伝統からの脱却が見られることと軌を一にするもので、既存研究を新しい角度から補完した。