研究課題/領域番号 |
18H05588
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
金 志成 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (30822952)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 戦後ドイツ文学 / 現代ドイツ文学 / 詩学 / フラグメント |
研究実績の概要 |
本年度は戦後オーストリアの作家トーマス・ベルンハルトを中心的な研究対象にし、歴史批判版全集をはじめとする一次文献および関連二次文献を購入し、研究環境を整えた。初期の散文作品における断片性の詩学を最初の課題に設定し、第74回日本独文学会春季研究発表会でのシンポジウム「フラグメントの諸相:文化的実践としての」にエントリーした。当該テーマについては他の登壇者とともに隔月のペースで研究会を行っている。 また、以上の研究の一環として、2019年1月に出版されたベルンハルトのデビュー長編『凍』の日本語訳(池田信雄訳、河出書房新社)の書評を図書新聞2019年4月13日号に掲載した。 他の戦後ドイツ作家研究としてはウーヴェ・ヨーンゾンの詩学における固有名の問題に取り組み、その成果は共著書『固有名の詩学』(前田佳一著、法政大学出版局)として2019年2月に出版された。また、ヨーンゾンをはじめとする近現代ドイツ作家における「暦の詩学」をテーマにシンポジウムを主催し(2018年5月、於:日本独文学会春季研究発表会)、目下その成果を論集として発表する準備を進めている。 さらには、2018年10月に小説『背後の世界』(河出書房新社)を申請者の単独訳で出版した現代ドイツ作家トーマス・メレを早稲田大学戸山キャンパスに招き、ワークショップ「病と創作:トーマス・メレ来日記念『背後の世界』ワークショップ」を主催した(2018年11月22日)。同ワークショップの成果については、早稲田ドイツ語学・文学会の機関誌『ワセダ・ブレッター』第26号にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期ベルンハルトの詩学というテーマについては一通り関連文献の収集を終え、研究観点に従った整理も進んでいる。また、5人のメンバーによるシンポジウムの準備会を通して多くの生産的なフィードバックを得られ、2019年6月開催の日本独文学会のエントリーも通過したことにより、その最初の成果発表の場はすでに整っている。対象作家の重要作が翻訳出版され、かつその書評の依頼を受けたことは研究をさらに推進した。 トーマス・メレを招いてワークショップを主催したことは、本研究の中心的な課題である「言説制度としての詩学講義および詩論的テクストの文芸的契機」について実地で調査を行うことができ、研究の出発点となった仮説を検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
直近の成果発表の場としては、2019年6月の日本独文学会春季研究発表会でのシンポジウムがすでに決定しており、ベルンハルトの初期散文作品における断片性の詩学について口頭発表を行う。 また、2019年6月にはヨーンゾン協会が主催する国際学会(於ロストック)、7月にはマールバッハ文学資料館が主催する国際学会に発表者として招待されており、前者ではヨーンゾンにおけるアレゴリーとコレスポンダンスの問題、後者では1961年のベルリンの壁建設が戦後ドイツ作家の詩学にもたらした影響について発表を行う予定である。 以上の成果は加筆・訂正を経た上で、『日本独文学会研究叢書』、『日本独文学会誌』、『ヨーンゾン年報』などの媒体で、日本語ないしドイツ語論文として発表することを予定している。年度の下半期において複数の論文執筆作業を並行して行うことになるため、さらなる研究環境の充実化に努める必要がある。その一環として、6月から7月にかけての渡独の際には、集中して文献の調査・収集活動を行うことになる。
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