研究課題/領域番号 |
18H05591
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
瓦井 裕子 就実大学, 人文科学部, 講師 (20823967)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 源氏物語 / 源氏物語享受 / 和歌 |
研究実績の概要 |
本年度は、平安時代和歌を用いて『源氏物語』の享受の実相解明を行った。特に、後期摂関期における『源氏物語』享受の一端を明らかにし、院政期以降の『源氏物語』享受とどのように繋がっていくのかを明らかにするための視座の形成を目的とした。また、『源氏物語』と同時代和歌の検討を行うことによって、解釈の再検討を行った。具体的には以下の3点である。 1.後期摂関期に行われた歌合における『源氏物語』を検討し、主催者や歌人など人的関係の中から当時の『源氏物語』享受の様相を考察した。成果は、「後期摂関期歌合における『源氏物語』摂取」と題して、同徳・松陰日本語研究学会2019(於:同徳女子大学校)で発表した。 2.『源氏物語』賢木巻で六条御息所が弔問歌をおくる場面に注目し、同時代和歌との関連から解釈の再検討を行った。成果については、「六条御息所の弔問歌――さし置くという行為の意味するもの――」と題して、桜井宏徳・中西智子・福家俊幸編『藤原彰子の文化圏と文学世界』(武蔵野書院 2018年10月)に発表した。 3.『源氏物語』胡蝶・少女の両巻における〈竹が風に吹かれる情景〉に注目し、同時代和歌や漢詩との関連から解釈の再検討を行った。成果はそれぞれ、「『源氏物語』胡蝶巻における風に吹かれる竹」と題して『アジア遊学』223号(勉誠出版 2019年9月)に、また「『源氏物語』少女巻の風に吹かれる竹」と題してタイ国日本研究国際シンポジウム2018(於:チュラ―ロンコーン大学)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、『源氏物語』享受の実相の解明、また解釈の再検討のための研究を進めた。特に、後期摂関期歌合における『源氏物語』享受の検討は、次代における『源氏物語』享受の在り方とも深く関わっており、この点に関して重要な知見を得ることができた。成果は、論文2本、口頭発表2本として報告された。また、来年度の研究のための資料調査も行うことができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、『源氏物語』の最初期の享受資料ともされてきた成立年次不明の家集について、抜本的な検討を行い、成立年次の推定を改めて行う。これによって、院政期の『源氏物語』享受に関する新たな知見が得られると考えている。 また、院政期に向かう『源氏物語』享受の在り方についても引き続き研究を進めていく。成果は順次、論文および口頭発表として報告していく予定である。
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