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2019 年度 実績報告書

イギリス・モダニズム文学における共感の変遷――ブルームズベリー・グループを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 19K20800
配分区分基金
研究機関福岡大学

研究代表者

岩崎 雅之  福岡大学, 人文学部, 講師 (00706640)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2020-03-31
キーワードE. M. フォースター / ヴァージニア・ウルフ / モダニズム / 共感研究 / ブルームズベリー・グループ
研究実績の概要

2019年度は、まずE. M. ForsterのHowards End (1910) をEmpathy研究の観点から分析した。Howards Endは、19世紀的同情(sympathy)のリアリズムから、モダニズム的な共感のナラティブへの過渡期に位置付けることができる作品である。本作の特徴は、伝統的な作品の系譜に連なりながら、モダニズムを飛び越えてポストモダニズム的であるとさえも言われるような、急進的な語りを見せる部分にある。歴史的な感情であるとされる同情/共感の観点からこの両義的とも言える語りを分析した場合、Howards Endにはどのような歴史的局面が反映されていると考えられるのだろうか、という問いを立て、本作のエピグラフである「ただ結びつけよ…」から考えてみるに、Leonard Bastのような中産下層階級に属する社会的弱者に対する同情は、もはや現実的な解決策とはならず、Wilcox家的な商業か、もしくはSchlegel家的な芸術のいずれかという選択肢も、決定的な判決を下すための前提とはなってはいなかった、という結論を導き出した。単なる同情でも共感でもない、ただ結びつけるというリベラル・ヒューマニズムの態度にこそ、Forster独自の他者理解が見られる。
また、Virginia WoolfのFlush(1933)における、人間と犬という異なる動物同士の認知上の差異および共感の作用についても研究した。Flushは、ヴィクトリア朝を代表する女流詩人、Elizabeth Barrettの飼っていた犬であったが、彼の五感は、この詩人をもってしても理解することのできない世界の諸相を探り当てる。この点には、人間の知覚の限界の提示および文学の新たな可能性の模索という、モダニズム文学を考えるうえでも非常に重要な特徴を見出すことができる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] E. M. Forsterのリベラル・ヒューマニズム――同情と共感を越えて2020

    • 著者名/発表者名
      岩崎雅之
    • 雑誌名

      福岡大学人文論叢

      巻: 51 ページ: 987-1001

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Modernist Ecological Imagination: Woolf’s Empathic Writing in Flush2019

    • 著者名/発表者名
      IWASAKI Masayuki
    • 学会等名
      The 4th Japan-Korea International Virginia Woolf Conference
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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