今年度はCOVID-19の影響で予定していた現地調査が全く行えなかったため、調査済のデータと公刊されている方言文献の整理のほか、録音機を郵送しての遠隔調査を試みた。調査済データについては紙の調査票400点以上をPDF化した。方言文献は西日本のうち、淡路(1500項目弱)・奈良(254項目)・徳島(108項目)・高知(631項目)・岡山(3000項目弱)・鳥取(238項目)・島根(328項目)・山口(168項目)の方言資料の入力作業を行った。遠隔調査は、淡路島3市と岡山県備前市、高知県南国市、長崎県壱岐市で実施した。調査内容は淡路島3市が助詞と助詞連続のアクセントについての調査、岡山県備前市と長崎県壱岐市が方言語彙集の読み上げ調査、高知県南国市が文末詞「が」の無核化領域の調査である。遠隔調査によって、淡路各地と高知では1000項目強、備前市では2000項目弱、壱岐では述べ3000項目弱の録音資料を収集した。 この他、日琉諸語(日本と琉球の諸言語)の子音体系と格標識(主語、目的語などをどう表すか)に関する発表およびアクセントに基づく系統論に関する発表を行い、文献と方言に基づくアクセント史に関する口頭発表に1件応募した(採択)。 現在、備前市のアクセント資料の公開準備と、淡路方言の助詞連続のアクセント、高知方言の無核化音調についての分析を進めている。後の2者は、付属語のアクセント単位について、新たな知見が得られる可能性がある。
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