(1) 版本間の継承関係の解明:『封神演義』の主要な版本について校勘を行い、その関係性を考察した。その結果、従来四雪草堂本と呼ばれ一括りにされていた清籟閣本・本衙蔵板本・濱文庫本は各々特徴を有し、それぞれ未発見のテキストから派生、あるいは参照した可能性があることを指摘した。 (2)『封神演義』出版背景の考察:『封神演義』序文撰者の周之標は、万暦44~順治10年(1616~1653)の間、蘇州を中心に戯曲・散曲集や科挙受験参考書の編纂者として活動していたことが判明した。またその序文の主旨は、本小説に描かれた殷周革命の物語から明代末期の現実的社会問題を想起し、論じるものであると結論づけた。
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