本研究では、ヴォイヴォディナ・ルシン語の基礎的な動詞語彙の意味を通時および共時の観点から分析した。これまで辞書を除けば詳細な研究のなかったルシン語の動詞語彙について、語源から見た他のスラヴ語との共通性、意味変化の規則性、現代語における語彙の分布といった点を取り上げ、辞書や文法書の記述にはなかった語彙間の意味の対立や各概念の語彙化パタンの体系性を中心に考察を行った。具体的には、移動動詞と感覚動詞を取り上げ、〈移動〉や〈感覚〉といった概念が語源的には共通スラヴ語から継承された語彙が用いられるが、ほかのスラヴ語と部分的に共通しつつもルシン語独自の発展やルシン語独自の用法が見られることを指摘した。
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