本研究課題の目的は,日本人英語学習者による文章の読解を対象として,テキストの情報と情報同士の関係を図式化するグラフィックオーガナイザーの作成に関わるプロセスを検証するとともに,グラフィックオーガナイザーの作成が英語学習者の概要理解に及ぼす効果を明らかにすることである。 2022年度は,グラフィックオーガナイザー作成プロセスと概要理解への影響を検証する実験を実施した。実験では,日本人大学生が文章全体の要点・パラグラフの要点・詳細情報を含む説明文を読解し,考えていることを口頭で報告した (思考発話法)。読解時には2つの条件が設定され,(a) 協力者は最初に内容を理解するためにテキストを読解し,(b) 次にグラフィックオーガナイザーを作成しながら読解した。その後,協力者は文章の冒頭部分を手がかりとして,覚えている内容を書き出す筆記再生課題に取り組んだ。その結果,テキスト構造に関わる読解中の発話や,文章全体の要点・パラグラフの要点・詳細情報の階層的な関係を反映した読解後の筆記再生が,条件 (a) から条件 (b) にかけて増加する傾向が見られた。 研究期間を通した研究成果として,2021年度までの研究では,英語学習者が作成したグラフィックオーガナイザーを採点する評価者間信頼性を左右する要素が明らかにされた。また,2022年度の研究から,グラフィックオーガナイザーの作成は,読解中のプロセス・読解後のテキスト記憶において,英語学習者の概要理解をサポートする可能性が示唆された。これらのことから,本研究は英語学習者の読解研究や読解指導において意義があると言える。
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