研究課題/領域番号 |
18H05604
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
佐山 豪太 上智大学, 外国語学部, 講師 (60824480)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 動詞接頭辞 / コーパス言語学 / 認知言語学 / 放射状カテゴリー |
研究実績の概要 |
本研究は、ロシア語の動詞接頭辞を用いた効率的な語彙学習法を検討している。具体的に言うと、接頭辞po-とza-の意味記述を分析の対象としている(これらの動詞接頭辞は数多くの派生語に含まれているため、学習価値が高いと言える。つまり、両接頭辞の知識は、語彙力を効率的に伸ばし得ると考える)。 2018年度は、主に動詞接頭辞po-の分析を進めていった。まず、自ら作成した自作100万語コーパスから、当接頭辞の付いた派生動詞をすべて抽出した。そして、前後の文脈を確認できる形式でexcelデータに保存した。このデータ内で確認される派生動詞の当接頭辞の意味を、前後の文脈を頼りに判別していく。 上記分析の必要性は以下の通りである:po-は複数の意味を持っており、そのすべてを覚えることは学習者にとって負担が大きい。より効率的な語彙学習法を検討するのであれば、付加されている際の意味まで確認する必要がある。つまり、po-がどの意味で派生動詞に頻繁に付加されているのかを数量的に確認する。 これまでの研究において、接頭辞po-の意味分類は言及されてきた。ただし、いくつかある意味のうち、どの意味が頻繁に用いられているかを調べた応用言語学的な研究は存在しない。現在、後述の意味分類の枠組みを用いて、po-の意味毎の生起頻度を確認中である。 本研究における応用言語学的・認知言語学的な分析は、これまでの研究では行われてこなかった。この点において本研究は価値があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、まず自作の100万語コーパスから、po-とza-という接頭辞付きの派生動詞が生起している例をすべて抽出した(excel形式で保存)。そして、本研究では両接頭辞が付いた派生動詞の全数を調査する予定であり、現在、実際の言語使用においてどの意味がより高頻度に用いられているかを確認中である。 本研究が採用したpo-の意味分類の枠組みは以下の通りである:1. Result(結果):blagodarit' → poblagodarit'「感謝する」などに見られる様に、このpo-は、いわゆる体のペアとなる動詞を形成する。2. Some(少しの間):dumat' → podumat'「少し考える」。時間を表す前置詞句や副詞句を伴うことがある。3 . Start(開始)。ehat' → poehat'(乗り物で出発する)。この意味のpo-は、移動を表す基本形(派生元の動詞)に付加される。4. Overall(多数・全数に及ぶ行為):glotat' → poglotat'「多数を幾度にも飲み込む」。 意味の分析は曖昧になる場合が多い。そのため、可能な限り意味を形式に還元して分析を進めることとした。例えば、次のような意味分類の構造を設定した:1.の意味で接頭辞が付加される場合は、その派生動詞は他の完了体動詞と共に並列で用いられる。または、複数の詳解事典における体のペアの記述も参考にする。3.の意味で付加された派生動詞はvやnaなどの行き先を表す前置詞句を伴う。このような意味分類の枠組みを作成し、現在、意味毎の生起頻度を計測中である。なお、za-は意味の数が多く、また、先行研究の数が少ないため、現在、意味分類の枠組みを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通りに研究を進める予定である:まず、動詞接頭辞po-の意味毎の生起頻度を、前述の分類の枠組み(4つの意味)を用いて確認する(ただし、現実的には分類不能な「その他」といった枠組みも使用する)。そして、実際の言語使用において頻繁に用いられているpo-の意味(学習価値の高い意味)を選定する。それにより、より効率的な当接頭辞の意味学習の記述を整備する。同様に、動詞接頭辞za-にもpo-と同じ分析を行う:まず、アカデミー文法などの先行研究を参考にし、意味分類に必要な枠組みを作成する。その上で、生起頻度の高い当接頭辞の意味を確認し、学習価値の高い意味を選定する。 そして、認知言語学の観点から放射状カテゴリーを作成し、両接頭辞の意味記述を整備する。その際、プロトタイプの意味から、他の意味がメタファー、メトニミー、イメージスキーマ変換によって拡張していく図を示す。
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