研究課題/領域番号 |
18H05608
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山崎 薫 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (90822958)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 異本梁塵秘抄口伝集 / 郢曲抄 / 平安期宮廷歌謡 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非御撰であるがゆえに研究が立ち遅れていた『異本梁塵秘抄口伝集』の基礎的研究(諸本調査、翻刻、本文校訂、注釈)を進めることで、平安末期における宮廷歌謡の実態の解明に繋げることである。 今年度は、諸本調査と諸本の翻刻を進めた。「日本古典籍総合目録DB」(国文学研究資料館 http://base1.nijl.ac.jp/)を用いた検索によると、『異本梁塵秘抄口伝集』には、以下の①~⑦の七伝本が確認できるほか、先行研究によって、⑧が巻第十一巻の伝本の一つとして指摘されていた。 ①国立国会図書館蔵(巻第十二、一軸) ②宮内庁書陵部蔵(巻第十一・一三、梁塵秘抄等と合四軸) ③東大史料編纂所蔵(巻第十二~十四、一冊) ④天理大学図書館蔵(巻第十一~十四、梁塵秘抄等と合六巻六軸) ⑤多家蔵(「梁塵秘抄郢曲抄」、巻第十一、一冊) ⑥綾小路護蔵(巻第十一、紙背禅門語彙、天治本催馬楽抄等と合一軸、重美) ⑦山井景昭蔵(「多家秘書梁塵秘抄」、巻第十一、一冊) ⑧静嘉堂文庫蔵(「多家秘書抄 一」、巻第十一、一冊) また、『群書類従』に『郢曲抄』として巻第十一(底本不詳)が収められている。調査の結果、⑥の本は現在は天理図書館に『梁塵秘抄口伝集巻第十一及催馬楽抄』として蔵されていることが判明した。また、⑦と⑧に含まれている『異本梁塵秘抄口伝集』巻第十一は同一の本文であり、他に、盛岡公民館蔵や豊田市立図書館蔵の『多家秘書』に含まれる本文と同一であることが分かった。また、①~⑧以外の本として、天理図書館蔵『梁塵秘抄口伝集巻第十二抄』があることが分かった。これは、『異本梁塵秘抄口伝集』の本文の一部を抄出したものであるが、巻第十二だけではなく、巻第十四の本文の抄出も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、『異本梁塵秘抄口伝集』の諸本調査と翻刻を完了させ、その成果を発表する予定であった。 諸本については、現在確認できるものはすべて調査することができた。しかしながら、研究計画段階で把握していた写本だけではなく、新たに、天理図書館蔵『梁塵秘抄口伝集巻第十二抄』などに残る『異本梁塵秘抄口伝集』の本文を発見したことによって、すべての翻刻を終わらせることができず、研究成果の発表に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
翻刻をすべて終わらせ、本文系統を整理する予定である。併せて、当初の計画通り、本文内容の分析(注釈作業)を進めていきたい。 研究成果は、日本歌謡学会の秋季大会(2019年10月下旬開催予定)において口頭発表を行い、同学会の機関誌『日本歌謡研究』に投稿予定である。
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