研究課題/領域番号 |
18H05614
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大谷 伸治 弘前大学, 教育学部, 講師 (50826899)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 協同民主主義 / 非武装中立 / 大東亜共栄圏 / 日本国憲法 |
研究実績の概要 |
本年度は、①協同民主主義にかんする先行研究の収集・分析に励みつつ、②戦前・戦中との連続性に着目しながら、松谷誠や矢部貞治の1945~1946年の国家再建構想を分析・考察し、2つの学会発表をおこなった。 「「団子坂研究会」の非武装中立論」(2018年度東北史学会・弘前大学国史研究会合同大会、2018年10月7日)では 松谷グループ(「団子坂研究会」)の非武装中立論に焦点をあて、①いつ頃からその構想をもち始めたのか、②「大東亜共栄圏」構想のどの部分が克服された/引き継がれたのか、③非武装中立下での安全保障や国際協調体制をいかに考えていたのかを検討した。結果として、「団子坂研究会」の非武装中立論は、総力戦体制と対外膨張を正当化した「大東亜共栄圏」論と協同主義の系譜にありながら、国家平等論を取り入れ、その欠陥を克服した世界連邦構想の一貫であったを明らかにした。これについては成稿し、日本歴史学会『日本歴史』に投稿し掲載が決定した(掲載号は未定)。 「矢部貞治の憲法改正案と国体論:国体論と日本国憲法の連続性に関する一考察」(青森法学会第21回研究大会、2018年12月9日)では、矢部貞治が敗戦前後に政府筋の依頼で執筆した憲法改正案や国家再建構想を素材に、戦前・戦中の共同体的衆民政論との連続・非連続を検討した。結果、敗戦を前にした矢部政治学は新体制~戦中期の自己批判によって発展し、協同民主主義とは、戦前期の自由的衆民政と共同体的衆民政を止揚したものであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)戦後、自発的に日本国憲法に連なる構想をもちえた協同民主主義の具体的様相、(2)にもかかわらず衰退と忘却に至った軌跡とその原因を明らかにすることを目指している。 昨年度は、上記「研究実績の概要」で述べたように、敗戦前後に焦点を絞り、「団子坂研究会」の非武装中立論と矢部貞治の協同民主主義論について、それぞれ学会発表をし、学会誌へ投稿した。これによって、(1)の点を明らかにできたと考えている。特に、戦前・戦中の総力戦体制や対外膨張を正当化した「大東亜共栄圏」論・協同主義・国体論から連続する思考のもとに、自発的に日本国憲法に連なる構想をもちえたことを解明できた点は、その後の協同民主主義の展開、すなわち(2)の点を考える上で示唆を与えるものと思われる。 以上、当初研究計画の土台である(1)の点を明らかにし、(2)の展望が見えたことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、冷戦体制が激化していくなかで、「団子坂研究会」の非武装中立論がいかに変容していったのかを明らかにすべく、1946~1948年頃の国家再建構想を分析・考察する。なお、冷戦体制が激化していくなかで、旧軍グループを中心に再軍備構想の立案が進んでいく。それらとの比較も必要であろう。ゆえに、再軍備に関する先行研究を渉猟し、そのなかでの松谷グループの非武装中立論の位置づけを明らかにする。
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