近世大名家では、官位昇進や大名婚姻等、大名自身をめぐる「慶事」が家臣団も含めた共同体のなかでどういった意味を持ちうるのかという点が長く議論されてきた。本研究はこうした議論を踏まえた上で、大名自身の「慶事」が家臣団内部でどのように共有されていくのか、また共有されない情報があるとすれば、それはどういった種類のものであったのかという観点から大名の官位昇進をめぐる一連の動向を再検討した。 この点について解明するということは、「慶事」の意義を共有する回路を具体的に明らかにするとともに、「慶事」の意義を付与するという行為自体の有する政治性への着目の必要性を提示するものであると言える。
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