研究課題/領域番号 |
18H05621
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
程 永超 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (80823103)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 対馬藩 / 朝鮮 / 日明通交交渉 / 東アジア国際秩序 / 三国関係史 / 宗家文書 / 善隣通書 / 壬辰戦争 |
研究実績の概要 |
本研究では、日中間における朝鮮王朝を介した間接的に政治的な繋がりに着目し、その繋がりを具体的に実証し、グローバル・ヒストリーの手法を用いて東アジア国際関係史の再構築を目指そうとするものである。 本年度は壬辰戦争の戦後処理で求められた日明通交交渉過程と実態の解明を中心に進めた。 既に入手済みの史料を子細に検討したとともに、韓国ソウル大学校奎章閣韓国学研究院・国史編纂委員会など韓国各地に散在する近世日朝中関係史料を調査・収集した。具体的に、朝鮮経由の日明交渉交渉をめぐる幕府と対馬藩の動向を詳しく分析し、複数のルートが併存する時期と朝鮮経由ルートのみに依存する時期に分けて考察し、その実態を掘り下げたとともに、朝鮮経由の日明通交交渉過程の全体像を描いた。 そして、後金(のちの清朝)による朝鮮侵略(丁卯の乱、 1627)以後に対馬藩によって進められた朝鮮との交渉に注目した。それは対馬藩外交僧(規伯玄方)を正使、家老杉村采女を副使にして、朝鮮の王京まで到達した近世唯一の国王使である (1629)。従来学界で注目されていない「方長老上京往復書翰」(『善隣通書』に収録)、規伯玄方『方長老上京日史』、鄭弘溟著『飲冰行記』、『分類紀事大綱』を利用して、交渉過程を究明した。そのうえで、交渉に関わる三者(明・朝鮮・日本/朝鮮・対馬・幕府)の絡み合う秩序に注意しながら分析し、明朝・朝鮮・日本三国間における朝鮮の位置と、朝鮮・対馬・幕府間における対馬の位置の類似性を指摘した。 以上の研究成果の一端は、国際シンポジウム「16-19世紀東アジア国際秩序の成立と変容の研究―日本・朝鮮・中国(明清)三国の比較という視点」(島根県立大学、11月16日)で「17世紀前半朝鮮経由の日明通交交渉から見る日・朝・中三国関係」と題して報告を行い、質疑に応じた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択決定当時、すでにソウル大学奎章閣韓国学研究院で客員研究員(フェロー)として在外研究が始まっているので、 奎章閣韓国学研究院、韓国国史編纂委員会所蔵の資料収集と分析が順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は清朝の日本通交交渉における朝鮮の役割解明を中心に推進する。 清朝中国および日本を加えた三カ国の狭間に置かれた朝鮮王朝は、 日本と中国を連結させる架け橋でありつつも、両国の関係を阻害する裂け目ともなった。 特に情報伝達の面から見れば、朝鮮は日中関係に対して阻害と連結の両義的な役割を果たし続け、 近世に独特な日中関係の形成に密接に関係している。 この過程に焦点をあて、朝鮮の両義的な様相の実態を究明する予定である。
|