18-19世紀転換期フランスにおける地方行政システムの地域間比較を主たる目的とする本研究において、本年度は、2週間にわたる現地調査による史料収集を実施した。具体的には、パリのフランス国立文書館、及びガール県文書館(ニーム市)での史料収集を実施した。これらの成果として、とくにガール県におけるフランス革命期の地方行政及び選挙に関する史料をほぼ網羅的に収集することができた。また、ナポレオン時代におけるガール県の県会と郡会について、会議員のプロソポグラフィ研究を行い、彼らの社会的経済的性格、地域代表性についての解析を行った。同県の会議員の社会経済的性格については、想定していたように、帝政後期に土地所有者(旧貴族層)の重みが増すことが明らかになったが、ガール県が地中海に接する地域であり交易が重要な経済活動を構成していることから、卸売商人が常に一定数、会議員を構成していることにその特徴がみられる。また、当初、県会と郡会における地域代表性については、新たな選挙制度が機能し始める帝政後期を想定していたが、実際に、同県における史料を分析してみると、すでに統領政府期には、一定の地域代表性が担保される形で会議が構成され、さらに運営されていたことが明らかになった。これは、すでに検討したオート・ピレネー県とは異なる傾向であり、今後、この相違がどうして生じたかを検討する必要がある。想定されるのは、かつてラングドック三部会設置地方に属したガール県内において、それら行政区画がすでに早くから地域代表性を備えていた可能性である。このように地域比較の視座から、史料収集と分析が残される地域に関する研究調査を進めることで、これらの課題に答えることが可能であろう。
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