研究課題/領域番号 |
18H05633
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
片山 健太郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, アソシエイトフェロー (90526146)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 古墳時代 / 馬具 / 馬装 / 生産・流通 / 金工 / セット / 古代 |
研究実績の概要 |
本研究は古墳時代と古代の馬具研究の狭間にあり、十分に進んでいない7世紀後半を中心とする倭の馬具について、生産、使用の実態を資料に即して明らかにする。それに基づき、馬装体系と呼称される馬具の種類と組み合わせにより様々な社会関係を表示するシステムが当該期には存在したのか、存在したのであれば、前段階の馬装体系とどのように異なるのかを明らかにする。本年度は、7世紀の倭の馬具資料と関連資料を発掘調査報告書などにより集成し、修正カードを作成した。また、毛彫の棘付花弁形杏葉や飾金具などの良好なセットを保つ群馬県御門1号墳、同県鍛屋地2号墳、山梨県御崎古墳、同県寺ノ前古墳などの資料調査を実施し、実測図の作成や写真撮影をおこなった。これらの調査により、毛彫などの彫金による施文装飾の工程分析が、技術系譜の追跡や分類編年研究に有効であるという見通しを得た。また、雲珠や辻金具として用いられる飾金具の調査により、先行研究でおこなわれてきた形態や文様に注目した分類に加えて、飾金具そのものの材質と製作技法の分析が分類編年研究に有効であるという見通しを得た。 また、これまで研究を進めてきた障泥に関する論文を公表した。金属製の吊金具を用いた障泥は6世紀から本研究で主要な対象とする7世紀まで、使われ続ける馬具である。7世紀代の馬装を構成する馬具の一器種について体系的な分類案編年案を示し、系譜や変遷の特質まで明らかにすることができたのは、本研究を進めるにあたっても重要な成果である。 加えて、本務の中で古代寺院の風鐸の整理に携わる機会を得て、古代を中心とする風鐸の資料集成をおこない、編年研究の見通しを得た。古墳時代の馬鐸との関係、鋳造馬具生産との関係、さらには馬具生産と寺院の荘厳具などの生産との関係性を探る視点を得ることができた。馬具と関係の深い、寺院の建築用装飾金具などの資料集成にも着手できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料の集成はおおむね完了させることができたが、それに基づく各馬具の分類編年案の作成完了には今しばらく研究の時間が必要である。 また、国内の資料調査は順調に進められているが、韓国での関連資料の調査を実施することが初年度はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、国内の資料調査を進め、データの収集に努める。また、韓国や中国などにおける関連資料の資料調査も実施する。 7世紀代の馬具編年については、本研究開始前後に体系的な案が他の研究者により公表されたが、この編年案の妥当性を検証し、修正する必要があれば、自身の集成資料と資料調査等に基づき、研究の基軸となる編年案を早急に作成する。
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