本研究は、俄(にわか)という民俗芸能を対象とし、少子高齢化や過疎化の影響によって民俗芸能の担い手医が減少しているという現代的状況において、民俗芸能がいかに継承されているのかを動態的に明らかにするものである。本研究は、具体的に民俗芸能を支える演者や担い手、コミュニティに焦点をあて、参与観察によって収集した一次資料をもとに民俗学的な手法から分析する。これによって、文化財の資源化といった政策的な議論では捨象されてしまう、民俗芸能の上演における多様な立場性の人々の関係性や、継承過程の不安定さについても描き出すことを試みた。 本年は、現在も地域住民によって俄が演じられている3地域(熊本県高森町、長崎県新上五島町、岐阜県美濃市)において、主に俄が演じられる祭礼期間にあわせて現地調査を行った。 その結果、担い手減少が進む熊本県高森町では俄の演者という直接的な関与だけでなく、上演の場に周辺的に関わる人々の存在も観察でき、人々が「周辺的」で「一時的」な参加のあり方をうまく活用していることが明らかとなった。 また、研究期間中の動きとして、平成30年2月に熊本県高森町の俄が「高森のにわか」として国選択の無形民俗文化財に選ばれたことや、令和元年11月に岐阜県美濃市の俄が全国民俗芸能大会に出るなど、町外の人々の眼に触れる機会が増えた。こうした動きが今後の継承活動にどのように影響するのか、研究期間終了後も継続して観察していきたい。
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