本研究の目的は、ギリシャの水産物流通の実態と構造を、さまざまな地域・スケールにおける流通ネットワークとそれらの関係性に着目して解明することである。目的を達成するにあたっては、地理的・自然的条件の異なる複数地域を選出し、各事例における水産物流通の実態を明らかにして比較分析することで、異なる地域・スケールでの流通ネットワークがさまざまに断絶・結合しながら併存する水産物流通の多元的ネットワークを描き出すことを目指した。 以上の目的のもと、2019年2月にギリシャへと渡航し、北部ヨアニナ・パンヴォティス湖にて現地調査をおこなった。現地ではヨアニナ市長と面会して、研究の趣旨説明、協力依頼、今後の交流などについて意見交換をおこなった。パンヴォティス湖では漁師らへの聞取りと、湖の自然環境について観察をおこなった。また、パンヴォティス湖の自然生態研究グループと会合を開き、研究内容や合同調査の可能性について議論した。そのほかにも、アテネの水産物集積港であるケラツィニ港の見学、パトラ大学の漁業研究者との情報交換、メソロンギにおける漁業協同組合の活動視察などをおこなった。帰国後、2019年3月には日本地理学会2019年春季学術大会(専修大学)において、「ギリシャにおける水産物流通の多元性:ミクロとマクロ」という題で発表を行い、他の地理学者・漁業研究者らと成果の共有および議論をおこなった。 2019年度は重複受給制限に該当する助成事業に採択されたために本課題を辞退することとなったが、これまで取り組んできた研究内容には今後も引き続き取り組んでいく。
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