研究課題/領域番号 |
18H05641
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
清水 博之 茨城キリスト教大学, 文学部, 講師 (70822732)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 山・鉾・屋台行事 / ユネスコ無形文化遺産保護条約 / 文化財保護法 / 保護団体(保存会など) / 保存・継承 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、山・鉾・屋台行事の保存・継承の現状と課題を確認し、その要因を明らかにして、課題解決へ向けての提言をすることである。 山・鉾・屋台行事は、旧来、氏子組織や町内会組織によって継承されてきたが、戦後には文化財保護法に基づき新たに結成された保護組織が担うようになった。その結果、一部の保護組織では氏子組織や町内会組織と乖離し、若者の定期的・義務的な入会が滞ることになった。現在では保護組織の会員が高齢化し後継者が不足するという問題が起きている。 本研究では、「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に記載されたことを契機として、保存・継承の実態がどのように変化したのかという点に着目した。 本年度は、代表一覧表に記載された33件の保護団体(保存会など)とその山・鉾・屋台行事が継承されている自治体(市町村)を対象として、郵送によるアンケート調査を実施した。このアンケート調査では、ユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に記載される前と後の違いについてさまざまな角度から質問した。おもな質問項目は、次のとおりである。(1)記載発表時の自治体における記念事業や保護団体の動向 (2)一覧表への記載の前と後における山・鉾・屋台行事の観覧者の増減とその内容 (3)継承者の心情がどのように変化したのかなどである。さらに、国の重要有形・無形民俗文化財に指定されている茨城県日立市、埼玉県秩父市、富山県高岡市の山・鉾・屋台行事 については、実際に出向いて保護団体の会員をはじめ、その周辺で保存・継承に関連する人たちや行政の担当者に聞き書き調査を実施した。この3か所については、祭礼のときに保存会の会員や手伝いの人たちがどのように行動するのかをつぶさに観察調査した。 これらの調査をとおして得られたデータをもとにして、引き続き山・鉾・屋台行事を継承する人たちの「心意」を探求していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた調査事業は、ほぼ計画通りに進めることができた。 具体的には、ユネスコ無形文化遺産保護条約の代表一覧表に記載された33件の保護団体(保存会など)とその山・鉾・屋台行事が存在する自治体(市町村)を対象として、郵送によるアンケート調査を実施することができた。次に、新聞各紙に取り上げられた山・鉾・屋台行事がユネスコ無形文化遺産保護条約の一覧表に掲載されるまで関連記事を新聞各紙からピックアップすることができた。さらに、国の重要有形・無形民俗文化財に指定されている茨城県日立市、埼玉県秩父市、富山県高岡市の山・鉾・屋台行事 について、実際に出向いて保護団体の会員をはじめ、囃子を担当する周辺集落の人たち、山・鉾・屋台を組み立て、解 体、運行する職人たち、そして行政の担当者に聞き書き調査を実施することができた。この3か所については,祭礼のときに保存会の会員や 手伝いの人たちがどのように行動するのかをつぶさに観察調査することもできた。山・鉾・屋台保存連合会の総会にも出席して、全国の山・鉾・屋台行事の保護団体の会員から保存・継承の現状を聞くこともできた。 〔平成30年度の調査項目〕 アンケート調査の実施・回収、新聞各紙の過去記事の検索複写,現地聞き書き調査の実施、祭礼観察調査の実施、全国山 ・鉾・屋台保存連合会総会への出席(各保護団体への協力依頼)、日本民俗学会年会への出席、 山鉾屋台行事研究会への出席など
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の保護団体およびその団体が属する自治体に対してアンケート調査を実施した。 これを受けて、令和元年度には、当該アンケート調査の集計・分析を進める。なお、アンケート調査に対して回答のあった団体へは概報を本年6月頃に送付し、フィードバックする予定である。 このほかにユネスコ無形文化遺産「日本の山鉾屋台行事」として記載された33か所のうちの3地点(茨城県日立市、埼玉県秩父市、富山県高岡市)において現地調査を実施する。 具体的には、4月上旬に、茨城県日立市で催される「日立さくらまつり」で公開される日立風流物(1基)の組み立て作業を調査する。調査の方法は、日立風流物保存会の会員を対象とした観察と聞き書き調査である。4月下旬から5月上旬にかけては、富山県高岡市で高岡御車山祭を観察と聞き書きにより調査する。これに引き続いて5月上旬には、日立市宮田町に鎮座する神峰神社で7年に1回執り行われる大祭礼のときに奉納される日立風流物(4基)を参与観察と聞き書きにより調査する。そして、6月には京都市で開催される山・鉾・屋台研究会に出席する。8月には、青森県八戸市で開かれる全国山・鉾・屋台保存連合会総会に出席して、参与観察および聞き書き調査を実施する。 これらの調査を通して山・鉾・屋台行事の保存・継承の現状と課題を把握し、10月には、筑波大学で開かれる日本民俗学会年会で研究発表をする。11月には、本研究に関するシンポジウムを茨城キリスト教大学で開催する。このことによってより広い見識を得る機会とする。 12月には、埼玉県秩父市の秩父夜祭を観察調査する。 以上のとおり、アンケート調査の結果分析、および山・鉾・屋台行事の現地における参与観察、聞き書き調査などの結果をまとめて考察を加え、令和2年2月頃には本研究に関する報告書を完成させる。
|