研究課題/領域番号 |
19K20846
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
清水 博之 茨城キリスト教大学, 文学部, 准教授 (70822732)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ユネスコ無形文化遺産 / 全国山・鉾・屋台保存連合会 / 山・鉾・屋台行事 / 日立風流物 / 高岡御車山行事 / 秩父祭 |
研究実績の概要 |
全国山・鉾・屋台保存連合会の会員団体を対象として、平成31年1月に実施したアンケート調査のデータを集計し、令和元年6月に結果概報(中間報告書)としてまとめた。この報告書は、山・鉾・屋台の保護・継承活動に資するため、アンケート調査へ回答を寄せた243団体へ送付した。 調査活動については、令和元年4月4日から5日まで、日立さくらまつりで公開された日立風流物1基の現地調査をした。ここでは笠鉾の組み立てから公開、解体まで詳細に観察調査することができた。4月29日から5月2日までは、富山県高岡市で高岡御車山祭を現地調査した。5月3日から5日までは、茨城県日立市に鎮座する神峰神社の大祭礼で披露された日立風流物4基の現地調査をした。なお、この機会に茨城キリスト教大学の学生約50名がボランティアとして保存会の活動に参加した。日立風流物の保護団体がこのような組織的なボランティア活動を受け入れたのは初めてのことである。試行的ではあるが無形民俗文化財の実践的な保護・継承の活動となった。8月には、青森県八戸市で開催された全国山・鉾・屋台保存連合会総会へ出席し、広く会員団体の現状について調査することができた。この機会にユネスコ無形文化遺産になっている八戸三社大祭を現地調査した。 成果の発表については、10月に筑波大学で開催された日本民俗学会第71回年会において、「ユネスコ無形文化遺産保護条約は何を変えたのか―『代表一覧表』記載後の山・鉾・屋台行事―」と題して研究発表をした。11月には、茨城キリスト教大学でシンポジウム「山・鉾・屋台行事の保護と継承を考える」を開催した。12月には、「無形文化遺産の新たな活用を求めて」をテーマとした、東京文化財研究所で開催された第14回無形民俗文化財研究協議会に出席した。 これらの活動を通して、山・鉾・屋台行事の保護団体の現状と課題をより正確に把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、全国山・鉾・屋台保存連合会の正会員、準会員、そして特別会員に対してアンケート調査を実施した。このアンケート調査における選択式の回答については、第1報として結果概報(中間報告書)を各団体へ送付済みである。記述式の回答については、現在分析を推進中であるが、より詳細な考察を加えるために、補助事業期間延長承認申請をして承認を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、山・鉾・屋台行事を継承する保護団体が、ユネスコ無形文化遺産になったことによって、どのようにその環境や意識が変化したのかということが判明しつつある。最も大きな課題は、やはり保護団体の高齢化であり、新たに継承を担うべき若年層の加入であった。都市型祭礼における近世からの「加勢」という仕組みを持たずに継承してきた地方における祭礼・行事の継承に至っては、これは喫緊の課題となっている。そこで、京都祇園祭における在京の大学などによる組織的な学生ボランティアの現代の「加勢」の現状をあらためて調査し、地方における祭礼・行事についても同様の仕組みを導入することを試行し、現代における伝統文化の継承のあり方について実践的な取り組みを進めたい。また、その過程では、実際に学生ボランティアを推進している大学教員や学生OBを招いてシンポジウムを開催し手広く意見を求めたい。なお、その際には、学生ボランティアを導入したにもかかわらず失敗した事例についても紹介したい。 そして、「大学教育は山・鉾・屋台行事の保護・継承活動へどのように資することができるのか」という課題について、シンポジウムなどにより関係する大学、保存会、及び全国山・鉾・屋台保存連合会との連携を深めて実践的な調査・研究を推進する。 これまでに、日立風流物、秩父祭、高岡御車山祭について調査研究を進めてきたが、今後は京都祇園祭、高山祭についても引き続いて調査研究を進める。これらの5つの祭りは、ユネスコ無形文化遺産であるとともに国指定の重要有形民俗文化財と重要無形民俗文化財を重複して指定されている文化財であることから、山・鉾・屋台行事の中でも特に重点的な調査対象である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究では、全国山・鉾・屋台保存連合会の会員団体に対してアンケート調査を実施した。このアンケート調査の選択式の質問に対する回答については、第1報として結果概報(中間報告書)を各団体へ送付済みである。アンケートの記述式回答については、現在分析を進めているが、より詳細な考察を加える必要がある。併せて本年4月の日立市、5月の高岡市における祭礼・行事について追加調査をすることで、より精緻な研究成果が得られるものと考えていた。以上の理由により期間の延長を願い出て承認を得た。しかし、このところの新型コロナウイルスの感染拡大により、調査を予定していた日立風流物と高岡御車山祭は中止となってしまった。ついては、状況の推移を見守りながら、調査の実施を図りたい。また、収集したデータの分析を進めて、第2弾となる報告書(完結編)の作成・発行と山・鉾・屋台行事の保存団体、及び関係する箇所への配布を実施したい。
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