最終年度も、引き続き、ドイツ法における管理職労働者等に関わる法規制について文献調査を進めた。特に、有限会社法上の業務執行者への労働法の適用関係に関する最近の動向の調査及び検討を行った。ドイツでは、母性保護法の改正により、有限会社法上の業務執行者も同法の適用対象に含められた。その結果、業務執行者の解雇規制の状況にも変化が生じており、管理職労働者の法状況に近づいたということができる。もっとも、この改正は、EU法上の労働者性に関するEuGHの判例を受けたものであり、ドイツ法における業務執行者に関する価値判断が変化したためになされたものではない。そのため、母性保護法と同様の解雇規制を有する連邦両親手当及び両親休暇法は、業務執行者を適用対象とはしておらず、特別な解雇規制の中でも適用の有無に差異が生じている。この特別な解雇規制をめぐる状況は、管理職労働者等に対する労働法上の保護のあり方を検討する上で重要であると思われる。特別な解雇規制のあり方について、今後もより深く調査・検討を行っていく必要がある。 最終年度は、日本法の調査・検討も行った。特に、ドイツ法で母性保護法等を検討した関係から、日本法においても妊産婦等への解雇や不利益取扱いに関する規制、及びそれと管理職労働者等との関係について、裁判例を中心に検討を行った。また、新型コロナウイルスの感染拡大が日本の雇用にも大きな影響を与えていたことから、管理職労働者への法規制を検討する前提として、新型コロナウイルス感染拡大による労働法上の問題についても検討を行った。 最終年度は、これまでの研究成果の一部を論文にまとめて公表した。
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