本研究は、2016年公布の「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」によって、2019年6月に導入された身柄拘束中の被疑者に対する「取調べの録音・録画制度」の下で作成される映像について、その利用範囲の拡大可能性を検証することを目的とするものである。 昨年度に引き続き、電磁的記録である取調べ映像が、改ざんなどのない真正に作成されたものであることを保証する方策を明らかにするべく、電磁的記録の真正性の保証について既に議論がなされているアメリカ法との比較法的考察を行った。そして、アメリカ合衆国でも示唆されている電磁的記録の潜在的な危険性をふまえながら、今回の改正で想定されているように、被疑者の供述調書について、被疑者が取調べ中、不当な強制を受けることなく供述したかどうかを証明するために取調べ映像を利用するだけではなく、疑者の供述調書に代えて取調べ映像を利用することの是非と、その要件を明らかにすることを目指した。 分析にあたっては、図書を購入し、あるいは図書館及びオンラインデータベースを用いて資料収集を行い、適宜、証拠法に関する最新の知見を得るために、関連する学会又は研究会へ参加した。その成果は、2020年9月に中央大学市ヶ谷田町キャンパスで開催予定であった14th Human Choice and Computers Conference(新型コロナウイルスの影響で中止)のCall for Papers(国際会議中止の結果、電子出版へ切替え)に応募し、審査結果を待っているところである。
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