研究課題/領域番号 |
19K20863
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
岡村 優希 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50823093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経営関与 / 労使関係 / 手続的規制 / 労使自治 / コーポレート・ガバナンス / 基本権規範 / 情報提供・協議 |
研究実績の概要 |
本研究は、雇用の悪化そのものを事前に回避するという観点から、労働者の経営関与を対象として、その現代的な在り方を検討するものであるところ、本年度は、EU法の研究に注力した。 まず、前年度は、EU法が情報提供・協議を通じた経営関与を認めている淵源には、基本権規範が存在していることを明らかにした。本年度は、その検討をより精緻化した。具体的には、伝統的な団体交渉の枠内で認められていたにすぎない情報提供・協議の権利が、参加型民主主義概念のもと、それと分化する形で、独立した権利として認められたという経緯を明らかにした。ここからは、情報提供・協議を通じた経営関与が、労使の対立的構造を内在させている団体交渉とは異なり、労使の協調的関係性を前提として、双方の利益を増大させるうるものと理解されていることが窺える。 次に、経営関与の手続の具体的設計に関する検討をより詳細に行った。前年度は、各企業の個別事情に適した経営関与を認めるべく、EU法である欧州労使協議会指令は、具体的な経営関与手続の設計を労使の自律的な交渉に委ねている点を明らかにしていた。もっとも、実際上、経営裁量の広狭をめぐって労使間で対立が起きる可能性があるので、上記の協調的関係性を維持した形で労使の合意形成を支援することが課題となる。また、多くの企業活動がグループ単位で行われている現代では、実質的な意思決定機関に対する関与を保障することも問題になる。これらの点について、今年度は、欧州労使協議会指令が、標準的手続の片面的強行適用という制度を導入することで、当事者(特に使用者側)に対して誠実な交渉を行うべきインセンティヴを付与していることや、独自概念の導入により、法人格単位でなく、意思決定単位での交渉を義務付けつつ、企業グループ内での水平的情報提供を合わせて観念することで、実質的な経営関与の機会を保障していることを解明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に照らして前年度の研究をより精緻化するとともに、その成果を学術論文の形で公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、EU法における経営関与制度について、さらに詳細な検討を行う。その上で、我が国に対してどのような示唆がもたらされるのかを、解釈論・立法論の双方にわたって考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の研究の精緻化を行ったため、新規の文献購入費用が予定よりも抑えられたことが理由である。今年度は、研究をさらに発展させるため、必要となる文献の収集を中心に行う予定である。
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