研究課題/領域番号 |
19K20866
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
趙 テキ 広島大学, 社会科学研究科, 助教 (90825770)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 翼賛政治 / 民意 / 常会 / 協力会議 |
研究実績の概要 |
本研究は、翼賛体制下の下情上通制度である常会・協力会議制度を研究対象とし、地方・中央における各級会議の整備と運用状況を考察する。地方における会議の状況の考察は具体的に愛知県名古屋市を事例とする。以上の考察を通じて近代日本の翼賛政治の時期(1940-1945)、人民の意見・希望が各統治勢力によってどのように対応され、どれほど政治に反映されたかを地方・中央にわたって一定の程度で明らかにし、政治と民意との関係という視点から、翼賛体制の性質を再検討する。 今年度は前年度の研究を続き、国立国会図書館(東京)や名古屋市政資料館(名古屋市)などの諸機関にてさらに資料調査を行い、常会・協力会議の整備及び名古屋市の常会・市協力会議の運用の研究を深め、中央協力会議の運用も考察した。本研究と大学院時期の研究との整合も始めた。今年度の重要な研究成果として、名古屋市において常会・市協力会議が下情上通の機能を相当の程度で発揮し、必ずしも戦争協力と関わらない生活改善、社会資本整備などの多様な地域住民の意見・希望を政治に反映した事実を明らかにした、というものが挙げられる。研究成果を広島公法研究会、史学会などの諸学会で報告し、学会での議論をふまえて論文を執筆し、『広島法学』に寄稿した。 但し、新型コロナウイルス流行のため、今年度後半から研究の進行は当初の計画より遅れ、研究計画自体も調整せざるを得なくなった。その結果、研究期間を一年延長する。来年度は、中央協力会議の運用を掘り下げ、本研究の成果全体をまとめる。本研究と大学院時期の研究との整合作業も完成する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の前半に研究は基本的に計画の通りに進めた。だが、研究代表者は2019年7月に広島大学に就職し、所属研究機関の変化及び新しい研究機関での業務の多忙により研究時間が減少した。それに加えて新型コロナウイルスが流行し、比較的に研究時間が確保される2019年冬に行う予定の国家図書館(中国・北京)や国立国会図書館・国立公文書館(日本・東京)の諸機関への資料調査などの研究活動を見送りせざるを得ず、関連設備の納品が遅延することもあった。その結果、研究全体の進行は当初の計画より遅くなった。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度では、中央協力会議の運営、議案の提出と処理をめぐって、中央政治家の文書などの未公刊資料を中心にさらに資料を収集する。議案が会議で提出され、大政翼賛会、中央政府によって処理され、政治過程において影響力を発揮し、実現された状況を分析する。考察の中で、愛知県・名古屋市の議案の状況に注目する。 得られた成果に基づき、3年間の研究成果をまとめ、地方・中央にわたって常会・協力会議の整備と運用を明らかにし、政治と民意との関係の視点から、翼賛体制の政治体制の性質を検討する。また、本研究と大学院時期との研究を整合する。学術論文を執筆し、本の出版を図る。 新型コロナウイルスの流行は、来年度研究の進行にも大きな影響を与えると予想される。以下の対応策が考えられる。①公刊資料・先行研究著作をできるだけ購入し、電子資料も活用する。②出張が一定の程度でできるようになれば、一回の出張で資料調査と学会報告との両方の作業を行い、研究を効率化させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の進行は当初の計画より遅くなったため、次年度使用額が生じた。 来年度では、主に図書の購入、電子資料の印刷に次年度使用額を使用する予定である。また、所属研究機関からの交付金と合わせて、資料調査・学会発表のための出張の旅費としても使用する。
|