研究課題/領域番号 |
18H05663
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上條 諒貴 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (20826515)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 議院内閣制 / 首相交代 / 責任の明確性 / 内閣改造 / 数理モデル / 計量分析 |
研究実績の概要 |
我が国も採用する議院内閣制という制度においては、議会の信任を失うことによって国の行政の長である首相がいつでも交代しうる。一国のトップの交代が持つ政治的意味の大きさに鑑みれば、例えばなぜこうした現象が起こりやすい国とそうでない国があるのか、といった問いに答えることは重要な課題であると言えよう。 本研究は、首相が政府の政策にどれだけの責任を持つかに着目し、それが首相の地位の安定性にどう影響するのかを、数理的なモデルとデータ分析を用いて検討するものである。 2018年度については①先行研究を検討したうえで、政権党内の一般議員が首相を交代させる誘因と責任の明確性の関係を検討するための数理モデルの構築を行う予定であったが、その過程で理論的前提の妥当性を明らかにする必要性を感じたため、②首相側が党内の一般議員からの交代圧力に対してどのように対抗できるのかに関する研究を優先して行うこととした。 ①についてはこのような事情から先行研究の検討にとどまったが、(a)責任の明確性が高い場合は、首相の政策選好と能力がそれぞれ政策位置と政策の質(成功/失敗)を規定する度合いが大きく、(b)有権者はこうした首相の責任の大小を前提に、観察した政策の質から首相の能力を推論したうえで、首相の政策選好と合わせて首相への評価を形成する、(c)与党内の一般議員はそうした有権者の情報更新を考慮に入れて、首相を交代させるかを決定するといった、分析の目的に適したより具体的なモデルの設定についての示唆を得た。 ②については、首相側の対抗手段としての人事権の行使(内閣改造)に関する論文として成果をまとめることができ、強力な党内統制の手段と考えられている人事権も、首相への支持が低下した場合には行使に制約がかかり、それをもって交代圧力に抗することは困難であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題遂行の過程で、一般議員の誘因構造が首相交代を規定するという理論的前提の妥当性を前もって明らかにする必要性を感じたため、その作業を優先的に行った。こちらについては論文の採択にまで至り大きな成果を得たが、本年度に予定していた先行研究の検討と数理モデルの構築と並行して行ったため、そちらには遅れが出ることとなり先行研究の検討とモデル構築の予備作業にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
数理モデルの構築に遅れが出ているため、同時並行的にデータ分析の準備を進めていく。具体的には、内閣データに関しては、ヨーロッパ諸国についての既存のデータベース (The European Representative Data Archive)を手持ちの日本、カナダ、オーストラリアのデータとマージして用いることを考えている。責任の明確性の測定については、政権政党数などからなる従来から広く用いられてきた指標に加えて、上記のデータベースにある、首相の権力を指標化した比較的新しい変数を用いるなど幅広く検討することを考えている。
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