研究課題/領域番号 |
18H05665
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
寺本 めぐ美 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (40788981)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | トランスナショナルな政治運動 / 在外クルド人 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オランダに居住し、トルコに出自を持つクルド系住民第2世代が、トルコのクルド政党であるクルディスターン労働者党(PKK)が展開する「クルド・ナショナリズム」に共感する要因と、彼/彼女たちが PKK関連組織の活動に参加する契機を明らかにすることである。クルド系住民第2世代の活動を、オランダにおける1990年代以降の統合政策に加え、クルド地域における歴史的経緯や政治的展開による影響を踏まえて考察する。特に、高等教育を受けず、高度な職業的技能も持たないノン・エリートの第2世代に焦点をあてる。 2018年度の研究目的は、クルド系住民第2世代がPKK関連組織の活動に参加する背景を、組織の側から考察することにあった。成果として挙げられるのは以下の二点である。 第一に、2015年以降西ヨーロッパ全域でPKK関連組織の大規模な改編がなされたことが明らかになった。それまではトップダウン型の組織編成であったが、改編はボトムアップ型を目指すものである。改編の背景について、またノン・エリート層に与える影響については今後の検討課題である。 第二に、クルド組織幹部へのインタビューでは、組織側はノン・エリート層の動員について具体的戦略を持たず、彼/彼女たちの自発性を重視していることが強調された。ノン・エリート層が組織の活動に参加する背景として、トルコでの政治状況や、オランダにおけるトルコ系住民との緊張関係による影響が挙げられた。これらの背景について、ノン・エリート層の第2世代の側から検討することが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、3月にオランダにおいて約二週間の現地調査を実施することができた。そこでは、クルド組織幹部にインタビューを行い、組織側がノン・エリート層の動員をどのように実施してきたのかを検討した。また、組織幹部は、ノン・エリート層が組織の活動に参加する背景として、トルコでの政治状況や、オランダにおけるトルコ系住民との緊張関係による影響を挙げた。これは、研究代表者の仮説とも合致するものであり、2019年度以降の調査への大きな足掛かりとなる。さらに、組織幹部からは、ノン・エリート層のクルド系住民第2世代を紹介いただいた。この点もまた2019年度以降の調査を効果的に進めることを可能にするものである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には、クルド系住民第2世代がPKK関連組織の活動に参加する背景を、組織の側に加え、第2世代の側からから考察する。2018年度の現地調査でクルド組織幹部から紹介いただいた第2世代にインタビューを実施する予定である。 1990年代以降の統合政策は、オランダ語能力や学歴の向上、労働市場へのアクセスの改善といった、移民・難民の社会経済的上昇を重視した。ノン・エリートの第2世代は、これらの統合政策の指標を満たすことができなかった人々である。こうしたオランダでの排除ともいえる経験が、どのように第2世代の目を自身の出自に向けさせ、「クルド・ナショナリズム」への共感を促してきたのかを検討する。また、「クルド・ナショナリズム」に共感する要因として、トルコにおける歴史や政治による影響を考察する。 2018度の現地調査の結果、西ヨーロッパ全域でPKK関連組織の大規模な改編がなされたことが明らかになった。2019年度は、ヨーロッパ全域での改編の背景について、またこうした改編がノン・エリート層に与える影響を視野に入れて考察する。
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