2019年度は、マレーシアおよびインドネシアでの現地調査、現地調査で得られたデータの分析、論文の作成、国際ワークショップでの発表を行った。 マレーシアの現地調査では、2007年以降の選挙制度改革運動に参加した人々に対して、デモに参加した理由、治安部隊に対する恐怖の有無、治安部隊に対する対応の工夫などについて聞き取りを行った。またマレーシアの選挙制度改革運動に関する書籍、論文、資料を収集・分析した。インドネシアの現地調査では、1999年のスハルト退陣要求運動に参加した人々に対して、当時の状況、治安部隊に対する恐怖の有無とその理由等について聞き取りを行った。なお、マレーシアでは中国系住民、マレー系住民、インド系住民にそれぞれインタビューを行った。 これらの調査および前年度の研究活動を通して得られた資料・データから、過去長らく権威主義・半権威主義体制下にあった両国の国民(特に中産階級層)がそれぞれ国家権力をどのように捉えているのか、その核となる要素を分析した。また国民の抱く権力概念には国家間で違いがあること、その差異を生み出す要因としてそれぞれの国家の歴史(近代史および現代史)が重要であることが分かった。 研究成果は、いくつかの論文・口頭発表としてまとめつつある。現時点で、インドネシア政治に関しては2019年度に国際ワークショップにて発表を行った。また2020年度には日本語論文1本と英語論文1本がそれぞれ出版される予定である。
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