本研究の目的は、これまで見過ごされてきた高速炉開発に関する政策過程を明らかにすることにある。 本研究課題が補助金種目として採択された初年度の平成30年度には、高速増殖原型炉もんじゅの研究開発に携わってきた関係者等へのインタビュー調査と科学技術庁や内閣府といった関係省庁の行政文書調査を実施した。その結果、動力炉・核燃料開発事業団(現在、日本原子力研究開発機構に改称)に所属する技術者が、核不拡散を意識した研究開発を行っていたことを初めて明らかにした。このことを踏まえて、ジョン・キングダンの政策の窓モデルを用いて政策決定構造の特徴を分析し、高速炉開発について国家安全保障の観点から常時検討する場がなかったことも新たに抽出した。 令和元年度から令和3年度にかけては、新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、当初計画していた海外でのインタビュー及び行政文書調査を実施することができなかった。そこで、平成30年度の調査結果を、今後の研究の発展に資するようデータベース化して広く一般に公開した。 最終年度となる令和4年度は、米国のメリーランド州カレッジ―パークにある公文書館での行政文書調査を行った。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が残る中での調査は、当初計画の二分の一以下の日程で実施することとなり、日本政府や米エネルギー省の高速炉開発に関する意思決定が見てとれるような文書を見つけるまでには至らなかった。 今日まで開発が続いているものの未だ社会実装に至っていない高速炉について、その政策過程から示唆を得て今後の政策形成に活かしたり、研究の裾野を広げるためには、引き続き、国内外でのインタビュー及び行政文書調査を通した事実関係の整理や政策決定構造の特徴の分析を進めることが求められる。
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