本研究は、中国少数民族地域の政治、特に少数民族エリートの任用の制度的背景を、歴史的制度論の観点から明らかにすることを目的としている。そうした目的から、これまで文献調査を中心に原稿の執筆を進めてきたところ、2021年度は、本研究の最終成果に位置づけられる出版計画がいよいよ前進、実現した年となった。 近年、特に新疆ウイグル自治区の政治史を政治学、歴史学的に分析する、学術的、社会的需要が高まったこともあり、筆者の問題意識も自ずと新疆政策に主眼を置くものへと変化した。そのため本研究の最終成果物の出版計画も、特に新疆の少数民族エリートの任用の問題に焦点を当てることとした。具体的には、2022年の早期に中公新書から『新疆ウイグル自治区:中国共産党支配の70年』と題し、近現代新疆の政治史の屈折した歩みを論じた著作を出版することとなった。本研究において制度論的観点から行ってきた、少数民族エリートの任用に関する分析は、そのなかの根幹部分に盛り込むこととした。 近く刊行される『新疆ウイグル自治区:中国共産党支配の70年』は、本研究のほか、2021年4月から始まった筆者を代表者とする若手研究「中国新疆政策の分岐点:少数民族の解放から収容へ」等と合同の研究成果として位置づけられる。本研究の特徴である歴史的制度論の考え方を取り込みつつ、政治史的観点から中国の新疆政策を論じたものとしては、国内外含め、これまでにない画期的研究成果となると考えられる。
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