本研究の目的は、権威主義(非民主主義)体制の国家において重要な課題である、体制の長期的な存続、あるいは民主化に対して、市民や反体制派の政治参加がどのような影響を与えているのかを明らかにすることである。既存研究では独裁者が選挙などの民主的制度を体制維持にどう活用しているのかに関心が集まってきたため、反体制派側の行動選択についての検討は不十分であった。そこで本研究では、反体制派が参加可能な政治制度内/外の手段とその選択に着目し、それらが権威主義体制の安定性、崩壊のパターンに与える影響について検討した。具体的には、反体制派の対抗手段の中でも抗議行動と選挙に焦点を当て、権威主義体制を対象とする多国間比較分析とマレーシアを対象とする事例分析を行った。多国間比較においては、反体制派の抗議行動や野党の連合形成に対し、権威主義体制下での選挙の実施、とくにその繰り返しが影響を与えることに注目し、さらにそれらがひいては権威主義体制の安定性にどのような効果を持つのかを検証した。事例分析においては、大衆の抗議行動と野党間の連合結成交渉がそれぞれ長期的にどのように変遷し、マレーシアの政治状況の変化や政権交代につながってきたのかについて、マレーシア現地での文献収集やインタビュー調査などを行った。これらの研究に関して、学会や研究会で報告を行い、論文を投稿した。一部、投稿中の論文については、今後成果として出版できるよう引き続き取り組んでいく。
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