本研究では、インターネットの普及が時間利用・就業状態・人口動態に与える効果を推定した。分析では、都道府県毎にインターネットの普及時期・普及率が異なることを外生変動として利用し、総務省「ブロードバンド整備状況調査」・総務省「社会生活基本調査」・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」・厚生労働省「労働力調査」の個票データを用いた。 初めに、分析の前提として、インターネット普及前である1980年代からインターネット普及後である現在までの記述統計量を作成した。次に、各調査時点・都道府県別のインターネット整備率を操作変数として、インターネットの普及が社会生活基本調査における生活時間の行動の種類それぞれに与えた影響を推定した。分析の結果、インターネットの普及により、労働時間が減少・余暇時間が増加したことがわかった。また、「誰と一緒に過ごしたか」という質問項目の「一人で」という回答に着目し、インターネットの普及が孤立者数を増やしたのかを検証した。実証分析の結果、一人で過ごす時間が増加し、特に一人で過ごす余暇時間・生理的必要時間が増加したことがわかった。 さらに、就業状態に与える影響についても実証分析を行なった。各調査時点・都道府県別のインターネット整備率を操作変数として、操作変数法を用いた分析も行った。分析の結果、インターネットの普及によって、労働参加確率が上昇し、低技能労働者の賃金が上昇することがわかった。
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