本研究の目的は、認可保育所への補助金を増やした時に、保育所の受け入れ可能人数がどれだけ増え、それによって家計の行動(出生行動や女性の就業)がどのような影響を受けるのかを実証分析することである。具体的には、(1)認可保育所の拡充が女性の就業に与えた政策効果を推定し、保育所の増加により0~2歳の子どもを持つ女性の就業が増えたことを示した。(2)また、認可保育所の運営費が、保育所の定員(規模)によって不連続に変わるような現在の制度を利用して、運営費に関する保育所定員数の弾力性を推定した。推定の結果、認可保育所の定員は補助金に対して弾力的であり、現在の補助金設定を変えることでコストを増やすことなく、定員を増やすことができる可能性を示した。 保育所の拡充によって0~2歳の低年齢児を持つ女性の就業率が上昇したという結果は、出産前後の保育政策を考える上で重要な結果である。また、認可保育所の供給については、待機児童問題を解決するために新しく保育所を設置するだけでなく、供給側のインセンティブとなる運営費の制度を変更させるという新しい視点を提供するものである。 これらの結果は、東京労働経済学研究会(東京大学)及び第1回CREPE Conference(東京大学)において報告されている。 また、保育所の整備と家計の行動に関しては、分析結果の一部と国内の研究動向をまとめた論文が日本労働研究雑誌に掲載された。
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