研究課題/領域番号 |
18H05683
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩崎 瑛美 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (20824577)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 税負担削減行動 / 多国籍企業 |
研究実績の概要 |
本研究では,わが国に親会社を有する多国籍企業が,国際税務戦略を行っているかどうかを明らかにしたうえで,どのような手段によって企業グループとしての税負担を軽減しているのかを解明する。そのために,平成27年度に行われた税制改正前後で,わが国企業の所有権構造の変化を分析することにより,わが国企業が戦略的に税負担を軽減しているかどうかを検証する。そこで,平成29年3月27日に更新された,わが国の企業が有する全世界子会社の所在地国データを入手した。分析に際して,わが国親会社および外国に所在する末端子会社間でそれ以外の第3国に所在する関連会社の存在の有無を調査し,データを調査収集した。その後,平成29年3月27日に更新された,わが国の企業が有する全世界子会社の所在地国データを分析した。 その結果,平成27年度税制改正前後で,それぞれが異なる検証結果になると予想していたが,平成27年度税制改正後の平成29年3月27日に更新されたデータを用いた場合にも,平成27年度税制改正前の平成28年3月21日に更新されたデータを用いた検証結果と同様の傾向が見られた。 これは,平成27年度税制改正については,平成28年4月1日以降に開始する事業年度において適用されるが,経過措置により,平成28年4月1日において有する外国子会社の剰余金の配当を平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において受ける場合には,平成27年度税制改正以前と同様の取扱いとされることが影響していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,平成29年3月27日に更新された,わが国の企業が有する全世界子会社の所在地国データを入手した。分析に際して,わが国親会社および外国に所在する末端子会社間でそれ以外の第3国に所在する関連会社の存在の有無を調査し,データを調査収集した。さらに,平成29年3月27日に更新された,わが国の企業が有する全世界子会社の所在地国データを分析した。 その結果,平成27年度税制改正前後で,異なる研究結果となると予想していたが,平成29年3月27日に更新されたデータを用いた場合にも,税制改正以前の平成28年3月21日に更新されたデータを用いた検証結果と同様の傾向が見られ,仮説に一致する結果ではなかった。このような結果から,更なる分析が必要であるため,現在までの進捗状況はやや遅れているとした。 検証結果は,平成27年度税制改正については,平成28年4月1日以降に開始する事業年度において適用されるが,経過措置により,平成28年4月1日において有する外国子会社の剰余金の配当を平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において受ける場合には,平成27年度税制改正以前と同様の取扱いとされることが影響していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年税制改正前後の検証結果は,仮説に一致するものではなかった。これは,わが国多国籍企業の所有権構造の変化が,外国子会社配当に係る源泉税のコストによる影響だけでなく,わが国と租税条約を締結している国の居住者が,支払いを受ける利子や支払いを受ける工業所有権又は著作権等の使用料について,租税条約の規定に基づき源泉徴収税額の軽減又は免除を受けることができるため,それらの影響を考慮できていないことも1つの要因と考えられる。そこで,利子および使用料に関する租税条約の要因をコントロールすることを予定している。また,平成27年度税制改正の経過措置による影響も考えられるため,平成29年度以降の全世界子会社データを入手し,更なる分析を行う予定である。今後の分析モデルでは,産業特性による影響を考慮する。そして,これまで収集した研究データから企業の所有権構造を分析することで,わが国多国籍企業が戦略的に国際税務戦略を行っているかどうかを検証する。さらに,国際税務戦略を行っているわが国多国籍企業のみを抽出して,企業固有の特徴を明らかにする。
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