経済協力(ODA)については、世論調査でもよいイメージを受けていない。また、その使途については国会でも議論されるなど、国民から厳しい目が向けられてきた。学会においても、この分野については世界の経済学者や国際機関などが盛んに研究を行っているが、統一的な見解がみられていない。日本は1970年代後半から東南アジア地域を中心に支援を行っており、インフラ支援を中心としたODAがその後の民間直接投資を呼び込む形で経済発展の一定程度に貢献したのではないかという議論があるが、データ制約もあり定量的に行った分析は少ない。 本研究では、こうした背景から、すでに半世紀以上にわたり日本が中心となって支援を行ってきたタイを中心として長期にわたるデータを獲得し、これまで行ってきた経済協力(ODA)が受取国であるタイの経済成長や財政状態に対する貢献、援助機関間の関係に関する研究を行うことで、こうした定量的な分析を行うことを目的としてきた。 研究の結果、以下について定量的に示すことができた。①これまで日本が中心に行ってきた対タイ経済協力はタイの経済成長にも一定程度貢献していることが示された。②対タイ経済協力により、タイの財政は国内借入を一定程度に抑えるなど、タイ財政にも貢献できた。③援助機関間の関係において、どこかの機関が先導・追随している関係はないものの、日本はアジア開発銀行より少し遅れる傾向がある。 こうしたアプローチにより、これまで日本が行ってきた経済協力は被援助国であるタイに対して経済成長面や財政面等から一定程度貢献していることを定量的に示すことができた。
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