プロイセンの国民経済の形成期に多国籍化する家族企業の利害構造の解明

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K20887
• 配分区分: 基金
• 研究機関: 学習院大学
• 研究代表者: 竹原 有吾 学習院大学, 経済学部, 准教授 (80823591)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 家族 / ユダヤ商人 / 取引関係

研究実績の概要

プロイセン王国のユダヤ教徒の一族には、国民経済の形成が進んでいた中で、諸都市でユダヤ教徒の置かれた政治的・経済的な立場の改善に向けて、プロイセン王国の経済発展に貢献するような形でビジネスを展開する者がいた。ただ同じ一族の中には、各国に移住してビジネスを展開し、その移住先の国の国民として経済的に活躍していこうとする者も見られた。そうした一族の内部でビジネスの利害がどのように調整されていたのかについて着目し、一族が国際的に活躍することができた要因を探ってきた。
しかし、すでに2018年度の研究実績として「同じ一族であっても、経済活動の拠点が別々になった家族同士では、商取引において利害対立が生じていた可能性」があったことを指摘したが、その後、利害対立の可能性について引き続き分析を進めたところ、ユダヤ教徒の一族が世界各国で経済的に活躍していた要因が、一族内部のビジネスにおける協力関係とは関係がない可能性が高いことが見えてきた。
そうした研究状況を踏まえて、ユダヤ教徒の一族が世界各国に拠点を持ち経済的に活躍できた要因について明らかにするために、どのような切り口から分析を進めるかを考え直す必要に迫られた。そのため、一族の内部でビジネスにおける協力関係がないと考えた場合に、同じ一族であるという事実が、経済活動においてどのような役割を果たしていたのかを検討することにした。そして特定の一族の人間であることが、世界各地で取引関係を構築する際に何か重要な役割を果たしていた可能性がないかを具体的に見ていくことにした。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

学内業務の大幅な増加と研究室の移動作業によって、考察を深めるうえで必要な研究時間を十分に確保できなかったため。

今後の研究の推進方策

世界各国にユダヤ教徒の一族がどのように経済活動するための拠点を築いていったのかについて、史料が手に入る事例を中心に分析を進めていくことにする。最終的には、その分析結果から明らかになったことを論文としてまとめていくことにしたい。

次年度使用額が生じた理由

想定していなかった学内業務の大幅な増加と研究室の移動作業によって、2019年度は予定通りの十分な研究時間を確保することができなかった。そのため、予定していた海外における追加の史料調査を実施できなかった。2020年度も感染症の流行により海外で史料調査を実施することができない可能性があるため、研究の進捗状況を踏まえながら、基本的には海外からスキャンしたデータのファイルを送ってもらうといった形で行う史料の収集に資金を利用していきたい。