研究課題/領域番号 |
19K20888
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 研介 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (40450506)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 競争政策 / 独占禁止法 / 企業結合規制 / 合併シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,各国の競争当局による企業結合審査(合併,買収等の競争効果に関する審査)において従来考慮されて来なかった,市場における競争に関する需要者(結合する企業の顧客)の認識変化に焦点を当てた理論的・実証的分析を行う。具体的には,企業結合の効果を予測するために実施する合併シミュレーション等の経済分析の結果が,需要者の認識変化を考慮する場合としない場合とでどのように異なるかを検証する。 2019年度は(1)理論モデルの構築,(2)計量経済モデルの構築及び(3)データの分析を行った。理論モデルにおいては,需要者が考慮集合を形成した上で商品・サービスを選択するという設定を採用した。その結果,企業結合の前後における市場均衡の変化が通常の場合とは異なることが示された。この結果を踏まえ,計量経済分析においては,需要者が考慮集合を形成する過程と,考慮集合の中から商品を選択する過程の双方を表す離散選択モデルを採用した。また,このモデルを用い,中小企業による金融機関の選択に関する分析を進めている。これらの作業を通じて,研究の方向性が定まると同時に,分析のさらなる精緻化に向けた課題も明らかとなった。 2020年度は,理論モデル及び計量経済モデルを精緻化させるための作業を行う。そして,同年度中に購入する追加データを,2018年度に購入したデータと組み合わせた上で実証分析を行う。これらの成果が得られた段階で論文を執筆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理論モデルの構築に関しては,概ね所期の結果が得られている(特に,需要者が考慮集合を形成した上で商品・サービスを選択する場合は,合併の前後における市場均衡の変化が通常の場合と比べて異なることが示された)。ただし,需要者による考慮集合の選択と供給者による価格設定との間の整合性に関して,分析のさらなる精緻化が必要である。 計量経済モデルに関しては,先行研究に基づき,需要者が考慮集合を形成する過程と,考慮集合の中から商品を選択する過程の双方を表す離散選択モデルを構築した。理論モデルの精緻化に合わせ,計量経済モデルもさらに精緻化する必要がある。 現在は,2018年度に購入したデータを使い,中小企業によるメインバンクの選択行動を推定するとともに,中部地方における地方銀行同士の合併前後における変化を検証しているところである。想定していたよりも,合併前後における変化が乏しいため,直近の状況を記録した追加データを用いて計量経済分析を精緻化する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
理論モデルに関しては,需要者行動(考慮集合の選択)と供給者行動(価格設定)の間の整合性という観点からの精緻化を行う。また,それに伴って計量経済モデルも精緻化する。 計量経済分析によって,中小企業によるメインバンクの選択行動が,地方銀行同士の合併によってどう変化するかを検証するために,追加のデータを購入する。具体的には,2018年度に購入したデータと同様のもので,より最近の時期を対象とするデータを購入する。そうすることで,地方銀行同士の合併による需要者の行動をより精緻に捉える。 こうして得られた実証分析結果を基に,2020年度の後半に論文を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の実証分析では,地方銀行同士の統合後に,中小企業の金融機関選択行動がどう変わるかを検証することを目的としており,そのために平成30年度に購入したデータを分析している。その過程で,当初計画どおりに研究を進めるためには,直近の状況を表す追加データを入手する必要があることが判明した。ついては,本年度の未使用額を使い,次年度において追加データを購入することとしたい。
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