本研究の目的は、日本の上場会社による業績予想(以下、経営者予想)の開示が、資本取引に関する経営者の意思決定、すなわち財務的意思決定においてどのような役割を果たしているかを、実証的に解明することにある。 平成30年度における研究実績は以下の通りである。第一に、経営者予想の予想誤差のボラティリティに関する日本企業の実態分析を行った。財務的意思決定における経営者予想開示の役割を分析するためには、企業毎に異なる経営者予想情報の情報有用性を測定する必要がある。本研究では、経営者予想情報の情報有用性の測定尺度として予想誤差ボラティリティを用いて日本企業の実態分析を行った。 第二に、株式発行における経営者予想開示行動に関する分析を実施した。経営者は株式発行に際して、通常時とは異なる経営者予想開示行動をとる可能性がある。経営者が情報劣位にある投資家との情報の非対称性を緩和したいと考える場合、経営者はより正確な経営者予想を開示する可能性がある一方、より有利な条件で発行したいと考える場合には、不正確で過度に楽観的な予想を開示する可能性も存在している。現在、アーカイバルデータを用いた分析を行い、投稿論文の執筆を行っている。 第三に、自己株式取得における経営者予想開示行動に関する分析を実施した。経営者は株式発行と同様に自己株式取得に際して、通常時とは異なる経営者予想開示行動をとる可能性がある。他方で、先行研究では自己株式取得に関してシグナリング仮説と整合的な行動を取る可能性もある。現在、アーカイバルデータを用いた分析を行い、投稿論文の執筆を行っている。
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