研究実績の概要 |
本研究では、地球規模の環境問題である黄砂に注目し、環境問題・環境政策が子どもの健康に与える影響を推定する。具体的には、(テーマ1)黄砂の発生メカニズムにおける時空間的な異質性を自然実験と捉え、黄砂の飛来が韓国の子どもの健康に与える影響を検証する。また、(テーマ2)黄砂警報の仕組みにおける自然実験的な特徴に着目し、黄砂警報の発令により、子どもの健康がどの程度改善するかを解明する。平成30年度は本研究課題の1年目(2年間のうち)にあたり、主に以下の研究活動を行った。
(1)分析に用いる次のデータの収集と整備を行った。①韓国気象庁の国家気候データセンターより、全国91か所の観測局における気象情報(黄砂の観測有無や気温、風速、風向、気圧など)の時間値データ、及び、全国各地における黄砂警報の発令履歴、②韓国環境公団より全国398か所の観測局における大気汚染(PM10やPM2.5、SO2、O3、NO2など)の時間値データ、③韓国統計庁より出生と死亡に関するマイクロデータを収集し、整備を行った。 (2)整備した気象データをもとに、黄砂の発生における時間的な異質性を確認できた。まず、年度によって大きなバリエーションがあるがことが分かった。例えば、2011年(2013年)は総有効観測時間810,590(808,817)のうち黄砂の観測時間は3,501(221)であった。また、黄砂の観測は3月から5月までの春季に集中していることが分かった。 (3)黄砂の発生と次の気象状況との相関関係を確認できた。まず、黄砂の観測時には非観測時に比べ、風速が1.45m/s(95%CI:1.42~1.48)早く、降水量が0.14mm(95%CI:0.13~0.17)少なかった。また、黄砂の観測時には南西風の吹く時が多かった。360方位に表す風向の平均値は、黄砂の観測時に235°、非観測時に180°であった。
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