本研究課題は、経済学的なアプローチを通じて地方自治体ごとの政策の違いが都市の縮小化に与える影響を定量的に把握することを目的としている。昨年度はFeldandKirchgassener(2001)等の理論モデルを拡張し、同一生活圏を形成する地方自治体の選択している政策(課税・補助金)の違いが、どのような影響を及ぼしているのかについて実証分析を進めてきた。具体的には補助制度の導入と地方自治体の人口分布との関係を確認し、固定効果モデルによるパネル分析のもとで仮説を検証した。今年度は、昨年度の研究成果を拡張する形で同一生活圏一体と都道府県単位を分け、それぞれの政策が居住地選択行動にどのような影響を及ぼしているのかについての実証分析を試み、政策効果について検証を行った。いずれも補助金は地方自治体が期待する効果を持つものではないことが明らかとなり、結果の一部は学術雑誌に掲載した。 このほか、2020年の初頭から現在に至るまで、世界も日本社会も直面することになったCovid-19という新たな外的ショックが都市の縮小に与える影響、社会の変化について、コロナ後の都市の姿を見据えて検証しておくことが必要なのではないかという問題意識のもと、必要なデータの収集を行い、先行研究のレビューを行った。そのうえで、DX(Digital Transformation)の導入、活用等も含め、国内外の事例を参照しながら、人口規模に適した都市の空間的範囲の効率的な利用について考察した。
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