2019年に大企業の管理職女性及びその予備軍を対象とした調査を実施し、そのなかにスマートフォンアプリを介した家事や育児の外部化に関する質問項目やソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用しての実親や義親とのコミュニケーション頻度について質問項目を盛り込んだ。最終的な有効回収数は300を超え、2020年度はそのデータの分析を進めた。小学生以下の子どもを持ち、仕事の比重も大きい管理職女性であってもスマートフォンアプリを介した家事支援サービスや育児支援サービスの利用は限定的であることが明らかになった。これまでの自身の研究では、スマートフォンやタブレットの普及によって、育児に関する情報の取得が進み、また夫婦間で育児に関する情報共有が進む傾向にあることを示したが、家事や育児の外部化といった、いわゆる道具的サポートに近い部分では、ICTによってもたらされる「利用のしやすさ」は実際の利用とはそこまで結びついておらず、むしろ育児規範やジェンダーイデオロギーが家事や育児の外部化を規定する要因として強調されることを再確認することができた。ICTがサービスの提供の在り方をBtoCからCtoCに変化させたことによって従来手の届きにくかった家事支援や育児支援サービスがより安価で手軽に利用できるようになったもののの、その普及には家庭や子育てに関する価値意識や規範が障壁となっている可能性がデータの分析から示された。これらの知見の一部は、2020年10月にベトナムで開催された学会 (International conference proceedings: Gender roles in the modern family) でオンライン報告し、また中国で出版された学術書に分担執筆というかたちで発表することができた
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