本研究は2017年10月に近年でも最悪と言われる大規模火災、サンタ・ローサおよびナパ・ソノマ地域で発生した火災における発災直後の避難時および復興期における「市民力」に着目した研究を実施した。資料分析および聞き取り調査から、避難時に関しては、当地域では、災害を知らせる方法が整っておらず、多くの住民が家族、友人、近隣住民、消防関係者からの電話や声がけによって災害状況を認知し、避難行動に移していたため、避難が遅れたと推測できた。このような事態を改善するためにコミュニティ組織が中心となった対応および対策が検討されている現状を明らかにした。また、復興期においては、被災当初から地域組織や支援団体によるコミュニティ支援が行われたが、みなし仮設住宅の不足、住宅再建費の高騰、職場の喪失など多くの課題があり、移転せざるを得ない住民も多くいた。本研究はコロナ禍の影響を受け、現地調査が行えない状況を続いていたが、2023年に現地調査を実施できたことで、被災から約5年が経過した住宅地の再建状況を把握することが出来た。都市部の復興は進んでいた一方、郊外地はほぼ手つかずの状態が確認でき、住宅およびコミュニティ再建はコミュニティの影響もさることながら、地理や経済的な観点からの分析がさらに必要であることを明らかにした。 研究機関全体を通じた研究成果に関しては、市民による避難行動および住宅再建または移転に関する意思決定に係る住民または住民間のネットワークが一部で機能していたことを明らかにすることが出来た。また、気候変動の影響か、これまでの局所的な火災事例から、連続性が報告されるように変化していたことを把握するとともに、地域財政の安定にとっては早期の住宅およびコミュニティ再生が重要となるが、一方で類似の災害を予防しながら地域運営を行っていくという行政および住民の新たな課題が明らかになった。
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