研究実績の概要 |
2011年から継続するシリア紛争は現在も継続しており、隣国ヨルダンには656,213名のシリア人が国連難民高等弁務官事務所に難民登録されている(UNHCR.2020)。またその多くは81%(532,194名)が都市に在住する。その難民の26%は戦傷や先天性の障害を呈すると報告されている。 本年度の本研究では、2019年1月にシリア難民障害者支援を都市部で実施するリハビリテーション専門職への半構造化面接で、シリア難民障害者への支援内容とその困難点、シリア難民障害者の健康状態、今後の支援展開についてデータ収集を実施した。 また現地リハビリテーション専門職12名と研究代表者で「シリア難民障害者支援マニュアル」を構築するワークショップを2019年7月に実施した。現地リハビリテーション専門職が必要とする支援内容は、難民障害者の家庭を訪問し、運動療法や動作訓練を提供すること、また学童期の障害を呈する障害児には学習指導が必要であるという認識であった。 半構造化面接を帰納的分析した結果やマニュアル作成の結果からは、障害者のエンパワメントや社会参加への具体的な支援課題が抽出されておらず、今後の支援においてクライアントセンターケアの視点での介入の必要性が示唆された。本研究成果は、原著論文3編に採択済みである。今後の展開として、長期停留を余儀なくされているシリア難民障害者への継続的な支援とクライアントが中心となる自助団体の組織化、シリア難民障害者の社会参加を促すことのできるリハビリテーション専門職の育成が必要である。
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