本研究では、アメリカ統治下の沖縄で米軍基地内の高等学校に通いアメリカの教育を受けた「沖縄系アメリカ人」が、沖縄とアメリカの狭間をどのように生きたのか、そして、現在どのように自己の人生やアイデンティティを物語るのかに着目した。申請時の研究計画では、1972年の沖縄の「本土復帰」に伴い、沖縄を離れハワイやアメリカ本土に渡った方々にもインタビューを行い、ライフストーリーの聞き取りをする予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大のため、現地調査を実施することができなかった。そのため、沖縄県内在住者に対象を絞りライフストーリー・インタビューの実施と分析を行った。インタビュー調査からは以下の点が分かってきた。①戦後沖縄において統治する側(アメリカ)と統治される側(沖縄)の狭間に置かれた当事者の経験や心境が語られた。沖縄にルーツがありながらも米国国籍を有しアメリカの教育を受けた経験から、沖縄に居ても「故郷喪失」であったという言葉で自己の当時の心境を表現する者もいた。②ベトナム戦争に従軍した同級生の存在や家で働いていた地元沖縄の女性のメイドの存在など、アメリカ側からみた戦後沖縄の政治的・社会的状況についても語られた。③出身校である基地内の高等学校(クバサキハイスクール)に対する愛着が強く、同窓会や同級生との繋がりが維持されていることが語られた。クバサキハイスクールにはアジアからの基地関係者の子弟も通っており、米軍基地をめぐる人の移動の歴史を垣間みることができた。本研究の成果は英語の論文として出版予定である。
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