研究成果の概要 |
その生い立ちゆえに,施設児童は家庭で生活する児童よりも多くの喪失体験をすると考えられるが,施設児童の喪失体験やそれに伴うグリーフケアについての研究,実践はほとんど行われていない。そこで,本研究では施設児童が体験する喪失体験やそれに伴うグリーフ体験の実態とその必要性を明らかにすることに取り組んだ。施設児童が経験すると考えられる喪失体験を,発生頻度と職員にとっての扱いにくさを尋ねた。結果として,慣れ親しんだ環境の喪失と死など取り戻すことのできない喪失という2つの要因が存在することが示唆された。こうしたことから,施設生活の中にある喪失体験にも目を向け,必要に応じてグリーフケアを行う必要がある。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では,これまであまり触れられてこなかった,施設児童が体験する喪失体験やそれに伴うグリーフ体験の実態とその必要性を明らかにすることに取り組んだ。その結果,彼らは様々な喪失体験を日常的に経験していることが示唆された。また,死と関連する喪失体験について,施設職員は特に強く扱いにくさを感じていることが示された。 こうしたことから,施設児童に対する心理的ケアについて考える際,過去のトラウマやアタッチメントに焦点を当てるだけではなく,施設生活の中で少なくない喪失を体験していることを考慮し,施設生活の中にある喪失体験にも目を向け,必要に応じてグリーフケアを行う必要があることが明らかとなった。
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