研究実績の概要 |
認知症の人の介護は、その症状が持つ特性から家族介護者が心理的に受容し切れず、心理的なバランスが崩れる経験をする。しかし、家族介護者の心理的支援のあり方に関する研究は遅れており、特に介護過程における心理的側面を含む支援の検討が急がれている。 家族介護者の心理的支援について先行研究では、小規模多機能型居宅介護での仕組みが有効で、家族介護者を対象とする公的支援システムの必要性が提示されている。しかし、小規模多機能型居宅介護における家族介護者の心理的支援の有効性は検証されていない。 そこで本研究は、認知症の人を支える家族介護者への公的支援システムの構築を図るための基礎研究として、1)小規模多機能型居宅介護における家族介護者の心理的側面を含む支援の取り組みに関する把握と、2)家族介護者の支援を分析的な図式化を図り、3)小規模多機能型居宅介護における家族介護者への心理的側面を含む支援の有効性の検証を目的とする。 以上の目的を達成するために、平成30年度は文献研究と1)小規模多機能型居宅介護における家族介護者の心理的側面を含む支援の取り組みについて現状の把握を目的に、全国の小規模多機能型居宅介護事業所の5,082か所(2018年10月現在)を対象に量的研究を行い、回答が得られた506か所のうち有効回答の488か所(利用者7,834人)について分析を行った。 令和1年度は、2)家族介護者の支援を分析的な図式化を図るために、量的研究で質的研究への協力書の承諾が得られた139か所の中で小規模多機能型居宅介護の事業所14か所の専門職について質的研究を行った。現在は、令和1年度に行った質的研究の分析および、1)と2)における調査の分析結果を踏まえて3)小規模多機能型居宅介護における家族介護者の支援に関する有効性の検証のために分析作業を進めている。
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