本研究は、代理によるミュンヒハウゼン症候群(以下、MSBP)の被害者(子ども)と加害者(親)に関する具体的状況を把握し、MSBPが生じた背景要因とその課題を明らかにするものである。 2018年度は、①文献の検討、②質問紙調査の質問項目の修正・検討、③調査対象となる医療機関のリストアップ、④質問紙調査の実施・分析を行った。 具体的には、①においては系統的レビューの手法により、諸外国におけるMSBPの被害者(子ども)ならびに加害者(親)の特徴について明らかにした。この成果は、質問紙調査における質問項目の作成のために必要なプロセスであるとともに、日本におけるMSBPの実態を把握するための参考資料となった。②においては、既に実施した小児科医に対する質問紙調査の結果を再分析しつつ、①で実施した文献検討の結果をふまえ、質問項目を設定した。③においては、全国の小児専門病院36ヵ所、全国の特定機能病院85ヵ所、全国の地域支援病院523ヵ所の医療ソーシャルワーカー(約644人)を調査対象としてデータを作成した。④においては、調査用紙の回収数は320部/644部(回収率49.7%)、有効回答数は288部(有効回答率44.7%)であった。なお、当該調査によって、MSBPの被害者(子ども)と加害者(親)に関する支援前の生活状況・支援後の経過・支援内容について把握することは、今後、加害者(親)がMSBPに至った背景要因と支援に向けた課題を明らかにすることへつながる。
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