本研究は、親が子どもの病気をねつ造し、子どもを病気にして医師に治療を受けさせようとする虐待(代理によるミュンヒハウゼン症候群、以下MSBP)の被害を受けた子どもと虐待を行った親に関する具体的な状況を把握し、MSBPが生じた背景要因とその課題を明らかにすることを目的としている。研究の結果、医療ソーシャルワーカーのうちMSBPが疑われたケースを経験した人に対して関係機関へ通告や相談した人が少ないことから、MSBPに関する通告や相談をためらっていることが示唆された。また、MSBPは初期対応時から子どものこれまでの病歴を確実に把握し、親子分離に向けて慎重に対応をはかる必要があることを明らかになった。
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