研究課題/領域番号 |
19K20923
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 陽平 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (30827895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 主観的ウェルビーイング / パネルデータ / 就業ステータス / ベイズ統計 / 非正規雇用 / 失業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は正規雇用と失業のはざまに置かれた非正規雇用という就業ステータスに着目して、主観的ウェルビーイング格差固定化メカニズムを解明することであった。そこで、昨年度には文献調査を継続しつつ、データの再分析を行った。 文献調査: 時系列分析の手法を扱った文献などを調査した。 データ分析: 調査期間中に取り組むとしていた三つの課題のうち「非正規雇用であり続けることが主観的ウェルビーイングに与える影響の将来予測」という課題に取り組むために、状態空間モデルと呼ばれる時系列分析の枠組みを用いることとした。まずは、性別や就業ステータスといった説明変数を含まない最もシンプルなローカルレベルモデルでの推定と将来予測を行い、段階的に説明変数を取り入れて複雑なモデルを構成していくという方針のもと、モデルのコーディングを行った。 結果:ローカルレベルモデル自体のコーディングはできたものの、MCMCサンプリングの警告が発生したため、各警告内容に沿ってモデル化・コーディングの試行錯誤を繰り返した。具体的には、弱情報事前分布の設定、再パラメータ化、サンプリング初期値の設定、識別不能性への対応などであった。 意義・重要性: 今までのところ、順序を持つカテゴリカルデータ(すなわち、0から10までの数値で計測された主観的幸福感)を含むパネルデータに対する状態空間モデルでの実装例を先行研究に確認できていない。そのため、このようなデータに対するモデル化や可視化といった方法論の探求という点で一定の進展があったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ローカルレベルモデルのコーディングを行い、MCMCサンプリングの警告に対してもモデル化・コーディングの試行錯誤を通じて一定の対処ができたが、それでもなお取り除けていない警告が存在しており、対処が必要であるため遅れが生じている。一方で、なかなか適切な先例が見つからない順序ロジスティック回帰分析の結果をどのように可視化するかについての方針が立ったため、この警告を取り除くことができれば、スムーズにその後の研究プロセスに移行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き以下の通り研究を推進させていく。 (1)文献調査: 統計学やプログラミングに関する文献、及び本研究と類似した手法を用いた先行研究などの文献を引き続き並行して調査する。 (2)統計モデルの改良 ・将来予測の可視化 ・モデル評価 : 推定したモデルから予測データをシミュレーションし、その予測データを用いて将来予測の可視化、モデル評価を行う。 (3)研究成果の発信: 学術誌への論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由はデータの再分析に時間を要したことからその後の予定がずれ込んだためである。 使用計画としてはデータ分析で得られた結果を踏まえ、統計モデルにさらなる検討を必要とし、そのための文献調査を継続する。また、今年度はこれまでの研究をまとめ論文として投稿することを計画している。これらの事情のため、文献調査のための資料購入費、論文投稿のための英文校正委託費や論文投稿費用への使用を予定している。
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