研究課題/領域番号 |
18H05728
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山根 裕美 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (80830140)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 保全生態学 / ケニア / 野生動物管理 / ヒョウ / 生物多様性保全 |
研究実績の概要 |
本研究は、において、希少種であるヒョウ(Phantera paruds)の保全を目指す目的があり、その目的を達成するために、異なる地域で調査を実施してきました。対象は、1、都市であるナイロビ。2、観光地として有名なマサイマラ国立保護区周辺。3、人口密度が低く、牧畜民が生活するバリンゴ県となっています。都市であるナイロビについては2009年より調査を実施しており、ヒョウの行動や人々の生活圏とのオーバーラップなど、都市特有の特徴的な結果を得ることができ、それについて分析、考察を重ねてきました。近年新たに、観光地であるマサイマラ・エコシステムおよび、バリンゴ県を調査地として加えました。観光地であるマサイマラ・エコシステムについては、地域マサイコミュニティへの聞き取、センサーカメラの設置、およびヒョウの直接・間接観察を実施しました。今年度は、対象地域に生息するヒョウにGPS首輪を装着することで、より明確に彼らの行動を認知し、どのように地域住民や観光客の影響を受けているのかについて考察していく予定でいます。バリンゴ県においては、6台ほどのセンサーカメラを設置しています。設置したカメラに、複数のヒョウの写真撮影が成功しており、ヒョウの生息を確認できてます。しかし、写真の状態から個体識別には至っていません。この地域では、コミュニティにおける家畜被害が頻発しており、その原因のほとんどがヒョウとハイエナによるものだと聞いています。住民たちの負の感情が高まりつつある中で、今後より細かく話を聞いていくことで状況を把握し、保全のための、軋轢緩和策について検討していく必要があると考えています。また、ヒョウの個体識別からこの地域の個体数推定を今年度の目標として、研究活動を進めていく予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナイロビにおける都市部のヒョウと人々の関係については、2009年より実施してきた研究から都市に生息しているヒョウの生態を明らかにしてきました。また、地域住民のヒョウをはじめとした野生動物に対する感情について考察しました。現在は新たな2つの地域での調査を集中的に実施しています。現在、データを収集しているのは、マサイマラ・エコシステムにおけるヒョウと観光地の関係性および、バリンゴ県における、ヒョウの生息状況の把握と、牧畜民がヒョウから受けている被害についての現状把握です。 マサイマラ・エコシステムでは、水場に設置したセンサーカメラの分析、ヒョウの足跡や音声から、その生息を確認してきました。なかなか直接観察が難しいこともあり、近いうちにヒョウにGPS首輪を装着する準備を進めています。ヒョウがどのように国立保護区内とロッジなどが連立する地域を利用しているかを明らかにする目的があります。さらに近隣に住むマサイの人々にどのような影響を与えているかについても、調査をすすめていきます。 バリンゴ県においては、ヒョウの生息状況把握のため、センサーカメラを複数設置しています。カメラには特に夜間にヒョウの写真が頻繁に撮影されており、ヒョウの生息密度が高いことが予想されています。しかしながら、写真の精度から、個体識別が難航している現状があり、今後カメラの設置台数を増加して取り組んでいく予定です。また、この地域では、地域的にライオンが絶滅しており、ヒョウとハイエナによる家畜被害が深刻化しています。通常、雨季に被害が多いと報告されていますが、2018年の後期から酷い干ばつに見舞われており、今回の乾季はヒョウによる家畜被害も増加している印象があると、地域住民は嘆いています。このような状況を把握するために、地域住民へのインタビューと、日々の被害状況の情報収集を強化ししています。
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今後の研究の推進方策 |
マサイマラ・エコシステムでは、2019年の前期中にヒョウにGPS首輪を装着する準備を進めており、ヒョウがどのように国立保護区内とロッジなどが連立する地域を利用しているかを明らかにしていきます。GPS首輪を装着するためには、箱罠を仕掛ける必要があります。箱罠を仕掛けると同時にセンサーカメラを併設することで、罠の周辺でヒョウがとる行動についても、観察を進めていきます。罠の周辺でどの様な行動をとるかについては、周りの環境に大きく左右されるため、その地域のヒョウの特徴がよくあらわれます(山根2015)。そのため、ヒョウを捕獲に際して様々な情報収集が可能です。さらに近隣に住むマサイの人々にどのような影響を与えているかについても、聞き取調査をもとに調査を進めていきます。 バリンゴ県においては、センサーカメラの設置台数を増やします。また、設置範囲を拡大することで、ヒョウの分布範囲を推定します。また、今までにヒョウが撮影されていた場所でも、カメラの台数を増やすことで、より個体識別可能な写真の撮影を目指すことで、個体数推定を可能にします。センサーカメラにはすでに少なくとも3個体のヒョウが確認されていますが、個体識別不能な写真を加味し、より多くのヒョウが生息している可能性が高いため、今後のセンサーカメラによる調査は重要になってきます。また、地域住民へのインタビューを継続していきます。また地域住民が居住している、それぞれの位置情報をGPSに記録し、ヒョウの分布との関係性について、より明らかにしていきます。ヒョウの分布が地形によるものだったり、家畜の分布によるものであるかなど、明らかにすることが可能です。また、家畜被害の詳細を記録し、被害の状況について地域性を明らかにすることで、軋轢緩和についても地域住民と協働して実施、その後のモニタリングを行っていきます。
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