研究課題/領域番号 |
18H05729
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸生 岩手県立大学, 総合政策学部, 講師 (30827241)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 社会関係資本 / 集団 / 統計的社会ネットワークモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,集団を対象に継続的な社会調査を実施し,そのパネルデータを統計的社会ネットワークモデルにより分析することで,集団における社会関係資本の構成要素と機能間の循環的相互作用メカニズムを解明することである.初年度にあたる本年度には,データ収集と分析モデルの構築を試みる前段階として,①各概念の測定尺度の妥当性,②社会関係資本の構成要素間の関係,③集団参加と社会関係資本との間の関連を確認した.①について,本研究における社会関係資本の構成要素の1つである「信頼」変数の妥当性を検討するために,既存調査データの2次分析を行ったところ,日本人における一般的他者に対する信頼(一般的信頼)の範囲は非常に狭く,一般的信頼尺度の妥当性の低さが明らかになった.したがって,信頼変数を用いる場合には,従来,幅広い他者に対する信頼として想定されてきた一般的信頼を用いるのではなく,信頼の範囲が明確に定義された個別的・特定化信頼を用いる必要がある点が明らかになった.②では,社会関係資本の構成要素間の関係を分析したところ,職業威信の多様な社会ネットワーク(ポジション・ジェネレーター)に埋め込まれた個人ほど,信頼の範囲が広いことが明らかになった.③については,閉鎖的集団に参加する個人は,信頼の範囲が狭い一方で,開放的集団に参加する個人は,多様なネットワークを形成しやすいことが明らかになった.この点は,集団におけるネットワーク構造(開放性,閉鎖性)の違いによって,成員の信頼やネットワークが変わりうることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,上記の①~③の精査が早急に完了すると見込んでいたものの,それらの検討を丁寧に行ったため,時間がかかってしまった.その分,示唆的な知見は得られたけれども,調査の実施にまで至らなかったためである.
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今後の研究の推進方策 |
上記の「研究実績の概要」で述べた知見を踏まえて,来年度には,集団の調査に着手し,そのデータの分析を進める.同時に,上記の知見を国内外の社会科学系学術誌に発表する.
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