研究課題/領域番号 |
19K20926
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸生 岩手県立大学, 総合政策学部, 講師 (30827241)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会関係資本(ソーシャル・キャピタル) / 集団 / 統計的社会ネットワークモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,集団を対象に継続的な社会調査を実施し,そのパネルデータを統計的社会ネットワークモデルにより分析することで,集団における社会関係資本の構成要素と機能間の循環的相互作用メカニズムを解明することである.2年目にあたる本年度の研究成果(論文)は,以下の通りである. 本年度では,①社会関係資本の構成要素間の関係を解明するために,Coleman, Burt, Putnamの社会関係資本論で言及される集団のネットワーク構造が,Linの社会関係資本の形成に対して,どのような影響を及ぼすのかについて,日本人を母集団とする代表的なデータから解明するとともに,②社会変動に伴う社会関係資本研究の課題に関する最新の成果を対象に,理論的な整理を行った. ①では,集団のネットワーク構造がLinの社会関係資本の形成に及ぼす影響について,Coleman,Burt,Putnamの理論に依拠したネットワークの閉鎖性/開放性を表す閉鎖的/開放的集団への参加効果に関する仮説を検証した.日本の代表的な大規模調査JGSS 2012データを用いて,多変量解析を行った結果,第1に,開放的集団への参加数が多い個人ほど,豊かな社会関係資本を形成していた.第2に,閉鎖的集団への参加数が多い個人ほど,アクセス可能な地位の総数を多く形成していた.以上の知見は,豊かな社会関係資本の形成に対する開放的集団への関与数の重要性を示唆している. ②では,社会関係資本に関する最新の成果を整理することで,社会関係資本の構成要素間の循環的相互作用を検討した.佐藤(2019)と金澤(2019)の知見を踏まえると,上記①の成果で社会関係資本を形成しうると強調された開放的集団への参加・協力行動が,一般的信頼者タイプを形成する可能性をもつ一方で,閉鎖的集団で活動しても,特定化信頼しか形成されない可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の「研究実績の概要」で述べたように,研究成果の論文化については,順調に進んだ.しかしながら,調査の実施とデータ分析については,今年度において,大学内外の業務(学内委員会,講座運営,自治体の政策支援,学会委員会,本研究計画以外の研究プロジェクト)が集中的に殺到したため,土日祝日を含め,調査・研究の時間を全く確保できなかった.そのため,本研究計画を来年度にも延長し,来年度に調査・分析を実施することで,研究計画の遅れを取り戻す.
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの進捗状況」で述べたように,来年度には,調査とデータ分析を進めるとともに,分析によって得られた知見を国内外の学会大会や学術誌に発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度において,大学内外の業務(学内委員会,講座運営,自治体の政策支援,学会委員会,本研究計画以外の研究プロジェクト)が集中的に殺到したため,土日祝日を含め,調査・研究の時間を全く確保できなかった.それに伴い,1円も支出できなかった. 来年度の使用計画としては,新型コロナウイルスの収束状況を鑑みながら調査計画を柔軟に修正しつつ,今年度の使用計画に依拠して実行する予定である.
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